携帯料金の引き下げには公正取引委員会の出動が欠かせない

菅首相が政権の公約の1つに携帯電話料金の4割値下げを上げています。これは2018年8月に菅官房長官(当時)が講演で発言して以来一貫して主張しているものです。菅官房長官が言っても安倍首相の指示ではないためか、担当の総務省は本気で取り組まず全く効果が出ていません。逆に携帯3社の売上高は約12兆円から約14兆円に増加していています。これは家計から携帯3社に吸い上げられたお金が12兆円から14兆円に増えたことを意味します。まったく馬鹿げたことです。これに加え2019年10月からは、消費税が2%引き上げられ、家計には約5兆円の負担が加わっています。収入が増えない中で、こんなに吸い上げられたら家計が苦しくなるのは当たり前です。

携帯3社の直近の決算は、売上高約14兆円、営業利益約2兆8,000億円、営業利益率約20%です。同じ公益事業である電力の営業利益率が約5%であることを考えれば、携帯3社の収奪の酷さは明確です。従って、菅官房長官の主張は極めて当然のことです。

携帯3社がこれだけ収奪の限りを尽くすようななった戦犯の第一は電波行政を担当している総務省です。総務省で旧電電公社以来電波行政を担当する部署は、携帯3社の本部のような存在です。携帯3社が儲かるようにすることが自分たちの仕事だと思っているのです。公僕の使命を完全に逸脱しています。総務省は、菅官房長官の発言後、値下げ対策を出すのですが、それらは全て効果のないものばかりでした。業界関係者からなる有識者会議で調整したら、骨抜きになるのは当然でした。これを許した総務大臣に指導力がなかったということになります。

戦犯の第二は公正取引委員会です。携帯3社が同じような料金体系をとり、2年縛りと言う奴隷契約を強いて解約には高い違約金を設定し、高額な変更手数料を課すなど明らかに3社が協力して競争原理が働かない状態を作っているにも関わらず、全くメスを入れませんでした。これを競争制限行為と言わずに何を言うのでしょうか?それも公益事業でありながら巨額の超過利潤が生じているのです。その結果、家計は青息吐息の状態に追い込まれているのに、です。その間公正取引委員会は、長崎の十八銀行と親和銀行の合併など社会情勢から仕方がない案件を手掛けていました。JR東海のリニア駅建設談合事件も同じです。これはそもそも民間でやるプロジェクトに国が強引に資金を突っ込んだという背景を考えれば、談合で摘発などはありえないのです。

携帯電話の場合、まだ大部分の人は旧契約のままになっています。その結果1万円近い違約金規定は有効となり、乗り換えが制約されています。違約金が1,000円以下になるのは新契約の人ばかりなのです。1万円近い違約金は合理性がないとされたのだから、旧契約での違約金も1,000円にすべきなのです。これはできるだけ競争を制限したい携帯3社の要望を総務省が受け入れた結果です。携帯電話の乗り換えに伴うMNP料金は、来年から現行の3,000円がネット手続きの場合無料、店舗で行う場合1,000円になるということですが、携帯3社は光回線と携帯電話のセット契約を推進しており、その結果光回線の2年契約に縛られ、その間に携帯電話を解約すれば高い違約金が発生することになっています。これも乗り換えを阻害するために考えられたものです。その他新規契約や機種変更の事務手数料が3,000円と高額になっているのも問題です。手続きとしてはコンピュータにデータを入力するだけであり、数分で済みます。これが3,000円というのは明らかに暴利です。全国平均の最低賃金は、1時間当たり1,000円にもなっていません。携帯電話が生活インフラであることを利用して高額な手数料を取っているのです。

これらは公正取引委員会が出て行って是正させない限り直りません。公正取引員会の役割は、公正な競争状態を作り出し、国民の生活を守ることだと思います。菅首相の方針に連動して、公正取引委員会が出動する時です。