信託銀行の証券代行業務の不正、信託業務全体にも疑義

三井住友信託銀行とみずほ信託銀行が証券代行業務を請け負っている会社で、議決権行使の書類を期日までに受け取ったにも関わらず、集計に入れていなかったという報道です。

これを報道した日経は、「不適切処理」とか「誤集計」という表現を使っていますが、これは明らかに重大な「不正行為」です。被害は三井信託銀行で1,000社、みずほ銀行で400社と報道されており、常態化していたことになります。これは担当者のミスではなく、組織として認識して行っていたこになります。正しい集計が行われたならば、株主総会で承認された議案が否決となった可能もあります。会社および株主にとっては重大事であることが分かります。

以前から株主総会の運営には胡散臭さがありました。もう30年くらい前のことですが、株主総会では挙手や拍手で賛否が採られていました。しかし株主総会での議決は議決権の多数で決まるものであり、会場での挙手の数や拍手の多寡で決まるものではありません。従って、おかしいと思ったものでした。当時は総会屋という人がいて不正がはびこっていました。しかしその後、海外投資家も増え、会社提出の議案と対立する株主提案も増えて来たことから、議決権数の正確な集計が必要となっていましたので、是正されたものと考えていました。しかし、現在も当日株主総会に参加する場合、会場で議決権行使書を渡すので、果たして正確に集計できるのか多少疑問もありました。誤差があるとすればその分だろうと考えていました。

今回の報道を見ると、提出期限までに届いた議決権行使書を集計していなかったということですから、意図的だったことになります。悪い方に勘ぐれば、届いた議決権行使書を集計に入れると、会社提案が否決される、または株主提案が可決される恐れがあることこら、集計に入れなかったとも取れます。これは株主の権利の侵害であり、違法行為です。集計に含まれなかった株主は、その結果生じた損害が生じていれば賠償請求できるのではないでしょうか。

これが信託銀行で起きたことは、「信託」という看板に不信が生じ、信託業務への信頼性が揺らいできます。信託銀行と取引のある顧客は、取引内容を精査した方が良いと思われます。信託という訳の分からない言葉に騙されて、実はメリットない取引をやらされている可能性があります。また金融庁は信託銀行の信託業務に対し、徹底した検査を行うべきです。