携帯料金値下げは鬼退治
菅首相の携帯料金値下げの執念が実を結びつつあります。まだ具体的料金値下げにはなっていませんが、その動きが顕在化しています。9月29日に発表されたNTTのドコモ完全子会社化は、携帯料金の値下げに向けたものです。また30日には楽天が5Gの料金を月2,980円に設定し、現在7,000~8,000円する携帯3社の高料金を浮き彫りにしました。今後5Gの料金は2,980円に向けて値下げが始まると思われます。そうなると4Gの料金も下がらざるを得なくなります。結局携帯料金は、菅首相が2018年8月に述べた4割値下げの水準まで下がると考えられます。これは携帯電話の設備および運営コスト+5%の水準と考えられ、ほぼ電力業界の利益水準となります。
これで携帯3社は儲からなくなるかというとそんなことはありません。携帯電話を使ったサービスで収入および利益を拡大していくと考えられます。例えばスマホ決済であり、スマホを使った株式や商品の売買などです。ソフトバンクがpaypayに注力し、LINEを買収したのもこのための布石ですし、KDDIもじぶん銀行やカブドットコム証券などを買収しています。その結果、ソフトバンクやKDDIにとっては、事業上携帯電話はこれらのサービスを使うためのプラットフォームとしての役割になろうとしています。ただドコモだけがこの動きに乗り遅れ、携帯料金に頼る事業構造になっており、将来収益の低下を招くことは明らかでした。これが今回NTTがドコモを完全子会社化した原因の1つでもあります。今後ドコモを完全子会社化したNTTも同じような政策を採ってくると考えられます。
携帯3社がこのような動きをすれば、携帯3社の事業構造は楽天に似てきます。楽天が巨額を投じ携帯電話事業に進出したのは、携帯電話という事業のプラットフォームを携帯3社に押さえられたままでは、いずれ楽天の事業分野を携帯3社に侵食され、楽天は衰退するという危機感があったからです。携帯3社はこれまで協調体制を敷き、営業利益率20%という高収益を続けて来ました。KDDIはこの資金をau経済圏作りのための買収に使ってきましたから、今後携帯料金が下がることは想定内であり、今後も高い利益水準を続けられると考えられます。ソフトバンクは、昨年株式公開するまでソフトバンググループ(SBG)の100%子会社であり、その資金はSBGに吸い上げられ、米国スプリントの買収に2.4兆円、英国アームの買収に3.3兆円などに使われました。そのため、ドコモが5兆円、KDDIが4兆円を超える自己資本を蓄積しているのに比べ、ソフトバンクの自己資本は1兆円程度しかありません。今後の事業展開においては、ソフトバンクが一番困難な状況になると考えられます。
それを見越してSBGの孫社長は、この9月ソフトバンクの株式約22%を売り出しており、携帯電話事業から撤収する姿勢を見せています。SBGはソフトバンクの株式公開で2.4兆円、この9月の株式売り出して1.2兆円の資金を獲得しており、既に今後5年分くらいのソフトバンクの利益を吸い上げたのと同じ結果を得ています。これらの資金は日本の家計から出ており、SBGの資金源は日本の家計だったことになります。
これで分かるように、携帯料金値下げの影響は、孫社長に一番大きく出ています。孫社長のことを事業の天才という人がいますが、実体は携帯電話事業で3社協調体制を作り上げ、3社が共に高収益を得られるようした調略の天才です。これによって日本の多くの家計が余計なお金を収奪されました。またSBGはさまざまの決算操作をして法人税を納めないことでも有名です。こんなことは日本と日本人に愛着や愛情がない人、即ち鬼でないと出来ません。携帯料金値下げは、孫社長を一番直撃し、そのため孫社長は携帯電話事業から撤収を始めていますから、鬼退治とも言えます。