麻生副総理の支援を受けたら落選する?

菅内閣は自民党の細田、麻生、竹下、二階という大派閥が支持して誕生しましたが、政権発足後を見ると麻生派が孤立を深めている感があります。麻生派は党では総務会長をとり、内閣では麻生財務大臣(副総理)の再任の他、次の首相候補河野太郎議員も行革担当大臣に就任し、優遇されているように思えます。しかし、麻生派の麻生会長と菅首相は水と油の関係と思われますし、麻生会長と二階幹事長もそれに近い関係です。一方菅首相と二階幹事長は良好な関係であることから、麻生VS菅・二階の抗争関係が伺えます。菅首相は竹下派からは茂木外務大臣と加藤官房長官を入閣させたことから、良好な関係にあると思われます。また石原グループからは、仲の良い森山国会対策委員長の要請で、坂本一億総活躍担当大臣を入閣させましたので、これも良好な関係です。石破派から田村厚生労働大臣、岸田派からは上川法務大臣を入閣させていますが、首相を争ったことから良好と言うことはないと思われます。一方石破派と岸田派は、麻生会長とは犬猿の関係にあると思われます。麻生会長は石破首相絶対阻止でしたし、岸田議員については総裁選挙の際に安倍首相の支持を取り付けて来いとか、古賀氏との関係を絶ち切って来いとか嫌がらせとも取れる言動をしており、両派とも麻生会長は許せない存在だと思われます。この結果、麻生会長VS菅首相、二階幹事長、石破派、岸田派の構図が見えてきます。最大派閥の細田派ですが、麻生会長と仲が良かったのは安倍元首相個人であり、細田派全体としてはそれ程親近感はないし、どちらと言うと麻生嫌いが多いと思われます。

このように自民党内では、麻生会長は完全に孤立状態のように思えます。このようになったのは、麻生会長のぞんざいな物言いと尊大な態度がもたらしたものです。あれを見ればよい感じを持つ人はいないと思います。

昨年4月の福岡知事選挙の際、麻生会長は自民党の福岡県連をまとめ、現職の小川知事に対して新人の元厚生労働省官僚を立てましたが、現武田総務大臣を中心とした少数の自民党議員が支援する小川知事に敗れました。その際、菅官房長官が小川知事を支援していたのは公然の秘密です。これがあって今回武田総務大臣が実現したと思われます。というのは、総務省は麻生会長や佐藤総務会長などの麻生派の総務大臣経験者が影響力を持っています。例えば籾井元NHK会長は麻生氏と同じ福岡の筑豊地区の出身でしたし、その当時のNHK経営委員会委員長は福岡に本社があるJR九州の石原会長でした。これなど麻生人事であり、麻生氏のNHKに対する影響力の強さが伺えます。また、昨年9月に総務大臣経験者の高市早苗議員が総務大臣に就任し、NHK改革をやろうとしましたが、NHKは高市総務大臣に報告する前に佐藤総務会長が委員長を務めていた自民党の「放送法の改正に関する小委員会」に報告し、支援を取り付けました。その結果、高市総務大臣の指示は聞かず、ネット配信費用を受信料収入の2.5%以内に抑えると言う約束も、高市総務大臣交代が発表された9月15日に撤廃を発表しました。これだけ大臣をコケにできるのも、麻生会長や佐藤総務会長らの後ろ盾があるためと思われます。

菅首相は早くからNHKの受信料改革を唱えていますが、今回菅政権の方針にNHK受信料改革は入っていません。それは先ずは携帯料金の引き下げをやってからという優先順位からと思われますが、その他にNHK受信料改革派は麻生派を中心としてNHKに取り込まれた議員が多く、多くの抵抗が予想されるからと考えられます。従って、NHK受信料改革に着手する場合は、小泉政権の郵政選挙と同じように反対派の議員には刺客を立てるような事態になることを考えているものと思われます。

このように麻生会長はその強力な個性から自民党の評価を棄損する存在になっています。福岡知事選では新人候補が嫌いと言うより、麻生会長が嫌いと言う理由で現職の小川知事に投票した人が相当いたと思われます。これは福岡だけの特殊状況ではなく、日本全国の状況だと思われます。従って、選挙で麻生会長の支援を受けたら落選する可能性が高くなります。次の総選挙では麻生派議員の大量落選が予想されます。