公務員賞与0.05カ月引き下げの勧告は人事院の勘違い

人事院は10月7日、2020年度の国家公務員一般職の年間賞与を0.05カ月分引き下げて4.45カ月分にするよう国会と内閣に勧告したということです。

この根拠は人事院が6月から実施した民間給与実態調査で民間の昨年の賞与支給額が4.46カ月分で、国家公務員の4.50カ月分を下回ったからとしています。

この勧告は人事院の勘違いから出たものです。今人事院が考慮しなければならないのは、去年の民間の賞与実績ではなく、今年の実態です。

今年初めからのコロナの感染拡大で民間企業は、十分な事業活動ができず巨額の赤字を計上する企業が続出しています。例えば今年の第一四半期決算では、ANAは-1,088億円、JALは-937億円、JR東日本は-1,553億円、JR西日本は-767億円という状態です。その結果、夏の賞与も大幅に減額されていますし、冬の賞与に至っては、最近JR西日本は1.5カ月分、ANAに至っては0と決定しています。民間企業の冬の賞与支給額はこれから決まりますが、鉄道はJR西日本並み、航空機はANA並みになると思われます。また旅行業や宿泊業も賞与0が予想されます。その他の業種でも1,2カ月の減額が予想されます。その結果民間企業の賞与支給額は、平均で年間2,3カ月減らされるはずです。

人事院は民間のこういう実態に目をそらし、もっともらしく昨年の実績を比較した結果0.05カ月引き下げるのが妥当と勧告していますが、昨年比99.9%であり実質的に昨年並みということです。

これは人事院が民間の実態から目をそらし、公務員の待遇を守り、改善するだけの機関となっていることを表しています。人事院の勧告が政府や国会で尊重されるのは、人事院の勧告だからではなく、その勧告内容が公平に検討されており、社会的に妥当だからです。人事院はここを勘違いしています。今回の人事院勧告は、今年の民間の実態を考慮しないものであり、著しく妥当性を欠きます。これを尊重するということは、日本学術会議の推薦名簿通りに委員を任命することと同じです。

菅首相は「自助・共助・公助」を主張されています。これは菅首相の「三カ条の御誓文」であり、言わば憲法みたいなものだと思います。こういう事態にあっては、公務員も自助として、或いは共助として、数カ月分の賞与を削減するのが妥当だと思います。政府として良識ある判断をお願いします。

また、人事院は独立性を失い、公務員の待遇を守る、改善することだけを目的とする機関に変質していると思われますので、河野大臣の下見直しを検討して頂きたいと思います。例えば、人事院を廃止し、内閣給与局とする、或いは人事院の業務を民間の人事コンサル会社に委託することが考えられます。