大阪都構想の最大のヒットは大阪公立大学の誕生

大阪都構想の住民投票が11月1日に行われます。私は東京都に長く住んでおり都制度も経験していますが、そんなに良い制度と思えませんでした。区議会になると2,000票くらいで当選でき、田舎の地縁血縁の選挙と同じです。東京都からは首相が出ませんが、それは区議会から始まる議会選挙が田舎と同じシステムであり、東京都選出の国会議員は地縁血縁の代表者が多いからではないでしょうか。大阪も地縁血縁が濃い社会ですが、大阪都になり区議会が議会の底辺になると、更にこの傾向が強まると予想されます。だからあまり良い変化は期待できないと思います。

その中で最大のヒットは、大阪公立大学の誕生だと思います。大阪公立大学は、大阪府立大学と大阪市立大学を統合して、2022年4月に開学するということです。大阪公立大学の学生数は約16,000人となり、公立大学としては日本最大、一学年あたりの学生定員は2,853人となり、国公立大学としては大阪大学、東京大学に次いで第3位となる予定ということです。もちろん統合の目的は規模ではなく、質としても日本のトップレベルの大学を目指すと言っています。そのためには学力の高い学生を集める必要がありますが、現在大学の学生は偏差値により割り振らており、これを打破する必要があります。大阪公立大学の当面のライバルは同じ大阪にある大阪大学だと思いますが、大阪大学の学生の方が偏差値が高く、このままでは学生の質でかないません。そこで考えられるのは、授業料を免除して優秀な学生を集めることです。入学試験の上位20%の学生の授業料を免除する(入学後は学年の試験の結果で免除)ことが考えられます。ともかく上位20%だけでも大阪大学に合格できる学生を集めないと大阪大学に負けない成果を出すのは不可能だと思われます。こうして大阪公立大学の研究水準が上がれば、大阪の産業発展に貢献する人材が多数生まれます。現在はAIなど高い学力がなければできないビジネスが増加しています。そのため地方が産業を発展させるには、地元の大学の学力を上げるしかありません。この点において大阪公立大学は見本となる可能性があります。

地方で知の最高峰はその地にある国立大学のことが多いですが、その国立大学の学生は偏差値で割り振られており、その学生のレベルが地方の経済レベルとなっています。例えば東大がある東京都、京大がある京都府、阪大がある大阪府、東北大がある宮城県、九大がある福岡県という風に大学のレベルと自治体の経済力がほぼ見合っているのです。ということは大学のレベルを上げないとその地域の経済力が上がらないということです。このことに気付けば、地方の経済力の引き上げには地元の大学のレベルアップが不可欠であることが分かります。国立大学は国の所管であり、地方自治体は手が出せません。そこで多くの自治体にある公立大学のレベルアップが重要となります。現在県立大学や市立大学はほぼ文系学部になっていますが、文系学部は社会の仕組みや人間の営みを学ぶためのものであり、経済力を引き上げる研究開発力の向上にはつながりません。そこで公立大学を理系学部中心にすることが必要となります。これに気付いた奈良県では県立大学に理工系学部を開設する目標を掲げました。今後地方では、公立大学に理系学部を設置し、公立大学を地元の国立大学を上回るレベルの大学にする競争が始まると思われます。そしていずれ地元の国立大学と公立大学の合併が検討されるようになると思われます。