地方交付金には競争原理の導入が必要

今年年末の国債残高は1,000兆円を突破し、GDP比200%を突破すると予想されます。世界に例を見ない割合であり、日本が今後どうなるのか世界の財政専門家が注目するところです。果たして世界の一部の学者が言っているように、国債が自国通貨で発行され、自国内で消化されている限り問題ないのか、それともどこかで破綻を来すのか興味津々というより末恐ろしい状態です。これを増税で解消しようとしても家計の収入が増加しない中では限界があります。残された方法は1つしかありません。それはGDPを増加させることです。そのため菅政権の(とうより誰が政権をとっても)最大のテーマは成長戦略となります。菅政権は、とりあえず来年の総選挙までは携帯料金の値下げとNHK受信料の値下げで有権者の支持を得て、総選挙で勝利したらじっくりと成長戦略に取り組むことになると思われます。そのため経済財政諮問会議の下に成長戦略会議を置いていますが、経済財政政策の中心は成長戦略の達成となりますので、実質的には成長戦略会議がトップに来ると思われます。成長戦略会議の注目人物はデービット・アトキンソン氏です。マスコミは同氏の中心政策として中小企業の整理(併合)を揚げていますが、これは間違いです。同氏の中心政策は輸出倍増(あるいは3倍増)です。これによってGDPを増やし、財政を改善しようというものです。もう日本に残された道はこれしかなく、また十分実現可能と思われます。日本の総輸出額(2015年:6,240億ドル)は韓国(同:5,350億ドル)を少し上回る額であり、1人当たりでみれば韓国(10,371ドル)の半分(4,914ドル)です。このため国民1人当たりGDPで韓国に抜かれたというデータもあります(OECD2018年データ:日本41,501ドル、韓国42,135ドル)。抜かれていなくともこのままいけば抜かれるのは時間の問題です。テレビで見る韓国の街のきれいさや人々の服装良さを見れば、韓国が日本より豊かなのは明白です。韓国経済は輸出が支えており、その輸出は日本の輸出を奪ったものです。テレビ、液晶、半導体など次々と奪われています。今後日本が輸出を増やすとなれば、韓国に奪われた輸出を奪い返す必要があります。そしてこれは徴用工の賠償判決執行に対する最大の報復措置になります。というよりこれ以外の報復措置は効果がありません。従って、成長戦略会議では輸出倍増政策を中心に詰めるべきだと思います。中小企業の整理の問題は解決に時間がかかります。それに日本に中小企業が多いのは47都道府県制のせいです。銀行の数が多いのも同じです。小さな行政単位で競い合っていることが原因です。これらの問題は道州制にしたら解決します。

もう一つ成長戦略でやるべきことがあります。それは地方交付税交付金(地方交付金)に競争原理を導入することです。今の地方交付金制度では一人当たり都道府県民所得(以下県民所得)が低い程(税収が少なくなり)交付金が多くなります。県民所得は最高の東京都(2019年442万円)と最低の沖縄県(同203万円)では倍以上の開きがあります。本来所得の低い県は所得を上げる努力をしないといけないのですが、低い方が地方交付金が多くなるためそうなっていません。今の交付金制度では県民所得を上げようと言うインセンティブが働かないのです。国の成長戦略の達成には地方自治体単位で成長戦略を策定し、達成することが不可欠です。そしてそのインセンティブとしては地方方付金を県民所得の増加に応じて配分ことが効果的です。地方交付金はこれまで税収(所得)が多くなれば減額されていますが、これからは県民所得が増加すれば増やすことにします。そうすれば更に増加するよう努力するようになります。更には地方公務員の給与・賞与も県民所得に連動して決めるようにする必要があります。