大阪都構想否決でも次の総選挙で維新は大躍進

現在日本のメディアは米国の大統領選挙の話題で一杯です。米国大統領選挙をこれだけ取り上げるのならば、大阪都構想住民投票ももっと取り上げて良かったと思います。大阪都構想が出てきたのは、表面的には2重行政の解消と言っていますが、根本的には大阪府の中で大阪市の存在が大きすぎて、大阪府の役割が小さくなってしまったからです。ようするにこのままでは大阪府が要らなくなるという問題になってきていたのです。これは政令指定都市を抱える都道府県に共通の問題です。例えば、北海道は札幌市の人口(197万人)が北海道全体の37%を占めます。大阪市の人口(275万人)は大阪府全体(882万人)の31%ですから、大阪よりも北海道の方が深刻ということになります。また福岡県(人口511万人)の場合、福岡市(160万人)と北九州市(95万人)という2つの政令指定都市がありますが、この2つの政令指定都市の人口は、福岡県の50%を占めます。その結果、福岡県というのは福岡市と北九州市を除く市町村のことと言ってもよい状態になっています。これらが示す通り、政令指定都市がある道府県の役割は低下しており、道府県からしたら、政令指定都市と一体となる都構想は魅力的となります。静岡県の川勝知事が静岡市との一体構想を主張されているのも、この観点からだと思われます。

この問題は将来道州制が導入されるとすれば、決着はついています。道州は基礎自治体の集合となるので、都府県は廃止し、政令指定都市や中核都市が残ります(小さな市町村は中核都市単位に集約されることを想定)。従って、大阪都構想の住民投票が否決されたことは正しい選択だったと思われます。将来の道州制の導入を是とするのなら、大阪都構想はないと言うことになります。たぶん維新の会(維新)の面々は、将来の道州制の導入は是とするが、それまでには時間がかかるので大阪都で繋ごうとしたものと考えられます。大阪都構想は大阪府全体としたら効果はありますが、大阪市としたら町村レベルへの降格なので、マイナスです。大阪市の住民がここまで考えて投票したか分かりませんが、結果オーライだと思われます。

11月1日の大阪都構想の住民投票は、まれにみる賛否の接戦となり、どちらでもよかった私でもテレビの開票状況にくぎ付けとなりました。17,167票差で否決されると言うドラマチックな幕切れで、久々に真剣勝負の醍醐味を味わった感じがしました。この結果、維新はダメージを負ったという報道がありますが、逆だと思います。今回の投票で、大阪市民はこれから大阪が良くなると実感したでしょうし、全国の人たちも「大阪は民主主義の先進地かも」と思ったと思います。その結果、大阪市民の維新への支持は強まったし、全国の有権者も自民党より維新が期待できるかもと考えたと思われます。今の自民党への支持は、安倍前首相が選挙の度に言っていたように、「民主党政権よりはまし」という消極的支持であり、自民党政権に代わり得る政党が出現すれば、いつでもそちらに移ってもおかしくないものです。今回の大阪都構想の住民投票により維新は自民党の代わりになりうる政党と認識された可能性が高く、来年の総選挙では維新が大躍進すると思われます。その結果、自民党は過半数を割り、維新および公明党との連立政権になると思われます。