Eテレ問題、2,170円出してテレビで見るか、200円出してネットで見るか
高橋洋一嘉悦大学教授(内閣参与)が雑誌で発表したEテレ電波売却案に反論が相次いでいます。高橋氏の発表内容の一部を紹介します。
「いま若い世代を中心にテレビを持たない人が多く、すでに映像はスマホやタブレットで見る時代だ。そうした時代に、NHKがEテレで電波という公共資源を多く独占しているのはどうなのか。携帯電話システムの場合、500MHz~1GHzの周波数帯が使いやすいとされ、とくに「700MHz~900MHz」は電波がより遠くまで届き、建物の陰も回り込みやすく、結果として必要な設備が少ないので、プラチナバンドと呼ばれる。現在、このプラチナバンドに近い「470MHz~710MHz」の周波数帯をNHKと民放の地デジ放送が40チャンネルに分割して利用している。そして、テレビ局で地上波を2チャンネル持っているのはNHKだけだ。そこでEテレのチャンネル(周波数帯)を売却して携帯(通信)用に利用すれば、通話だけではなく、もっと多種多類の映像コンテンツを同時に配信できる。」
「もちろん、Eテレにはいい番組も多い。ただ、それらはネット配信に回せばいい。NHKは国会の予算委員会の一部だけテレビ中継しているが、国はすでに国会中継をネットでライブ配信しているからそれも使える。Eテレの電波を通信に再分配したほうがより公共のためになるし、NHK自体のスリム化にもつながる。これまで、Eテレのチャンネルを開放できない理由として、NHKは、教育放送のために地上波が必要だと言ってきた。たしかに、全国でみると、コンテンツのいい教育放送を地上波しか利用できない地域はなくはなかった。ところが現在、文科省は「GIGAスクール構想」を打ち出していて、状況は変わってきている。」
「NHKの番組で真の公共放送と呼べるのは災害情報と選挙の政見放送くらい。公共放送分に見合う受信料はせいぜい月額200~300円だろう。これを受信料として徴収せずに税金として他の税と徴収してもいい。その程度の金額なら国民も納得できる」
この文書を読めば分かるように、高橋氏は先ずNHKの放送のうち公共放送とは言えないBS放送などを民営化し、公共放送は災害放送や政見放送などに限定すべきと主張しています。そうすれば月200円程度の国民負担で済むから、これを税金(公共放送負担金)で徴収することを提案しています。これは今の受信料制度では絶えない受信契約や集金訪問を巡るトラブルを解消するためです。その上で、Eテレは良い番組と認めた上でネット配信に移行することを提案しています。それは、Eテレの内容は定時放送のテレビよりも見たいときに見れるネット配信が合っているし、NHKは放送の他にネット配信も行うことになると見ているからです。ネット配信のコストは放送に比べ安価になるので、NHK負担金を安価にできます。
Eテレをネット配信に移行すればEテレ用の電波が空くので、これを通信に使えば通話だけでなく映像など多くのコンテンツの配信に活用できると主張しています。
高橋氏の提案は、今問題になっているNHK受信料制度の解決、携帯料金の低減、電波の有効活用、放送と通信の融合などを総合的に考えた良案と言えます。
これに反発する人たちの主張は、Eテレは公共放送の代表的なコンテンツであり、これを真っ先に公共放送から除外するのはけしからんと言うことだと思われます。高橋氏の主張はそうではなくEテレは良いコンテンツと認めた上で、公共放送を災害報道や政見放送など民放がやらない番組に限定して、Eテレはネット配信でもよいのではないか、ということです。もちろん公共放送を災害放送、政見放送、教育放送とすることも可能です。従って高橋氏の主張によってもEテレはなくなるわけではなく、放送からネット配信に移行するだけです。放送と融合が進む時代においては、先ずは放送とネット配信の2本立てで行われ、いずれネット配信に収束すると考えられます。それに沿ってEテレは先ずネット配信に移行します。いずれNHKの公共放送は全面的にネット配信(ネット放送)に移行すると考えられます。
この流れが理解できれば、高橋氏の主張は時代の流れに沿った良識的な案であることが分かります。
NHKの前田会長やNHK出身者などが高橋氏の主張を捻じ曲げて解釈し、NHK受信料制度維持のために悪用しています。前田会長曰く、「教育テレビはNHKらしさの一つの象徴だと思う。それを資産売却すればいいという話には全くならないと思う」。高橋氏はEテレを売却すればよいとは言っていません。ネット配信に移行し、Eテレの放送に使っている電波を空けて通信に使えばより有効に使えると言っているのです。
あるNHK出身者は、「必要な改革は経営効率を上げるための話ではないはず。アーカイブをはじめNHKの映像資産や技術をより皆が使いやすくするべきものであるべき」と述べていますが、これに至ってはNHK受信料維持のための理屈以外の何物でもありません。見もしないNHKに少ない収入の中から月2,170円も払わされる人の痛みが分かっていません。また「最も公共放送らしいEテレ売却なんて馬鹿げてる」とも言っていますが、これも前田会長と同じく曲解です。これによってEテレファンをNHK受信料維持派に導こうとしています。
このように冷静に考えれば高橋氏の提案は、Eテレファンにも理解できるものであり、NHK受信料に苦しむ人たちも応援できる良案であることが分かります。