ドコモの2,980円プランでも家計支出は減らない、むしろ増える!

12月4日、ドコモが新料金プランを発表しました。20Gバイトまで月2,980円という料金を設定しました。これにマスコミでは「破壊的料金」というようないかにも家計支出が大きく下がりそうな表現が見受けられます。11月23日に発表したKDDIが3,980円、ソフトバンクが4,480円(いずれもサブブランドで)でしたから、これを1,000円以上下回るドコモの料金設定は、今まで横並びだったことを考えると驚きであることは確かです。

しかしKDDIやソフトバンクが慌てていないことを考えると、両社の経営にとってあまりダメージがないことが分かります。当然です。携帯電話ユーザーの6割以上が契約している容量は7Gバイト未満であり、今回のドコモの値下げの効果は、多くのユーザーには全く及ばず、KDDIとソフトバンクの収益に及ぼす影響は限定的だからです。減収になるというより、これまで7Gバイト未満の契約のユーザーが20Gバイトの契約に移行する結果となり、3社の収益は増加することが考えられます。これは即ち家計支出が増加することを意味します。そしてこうなる可能性は極めて高いと思われます。

菅政権の狙いである家計支出の減少のためには、7G未満の料金を大幅に下げる必要がありますが、これについてドコモは現在検討中であり、今月中に発表するということでした。これにより家計支出が本当に減るかどうかが分かることになります。

今回のドコモの発表によりMVNOが大きな影響を受けると言う評論がありますが、それは違います。MVNOの契約は小容量が多いため、今回のドコモ(KDDIやソフトバンク)の値下げの影響は全く受けません。むしろ今月中にあるドコモの7ギガバイト未満の値下げの影響を受けるはずです。しかし、ドコモはMVNOに対する回線使用料の値下げを求められており、今月中に値下げが実施されると予想されます。そうなるとMVNOももう一段の値下げ余地が生まれます。

ドコモの今回の値下げは新たにサブブランドを設けて実施すると言われていましたが、本体で実施しました。これは当然で、ドコモはMVNOへの回線貸しにも注力しており、顧客と競合することになるサブブランドを設けるはずがありません。将来的には光回線と同じように本体は回線の敷設と維持に特化し、販売は代理店(MVNO)という分担になるのではないでしょうか。そうなるとドコモは回線使用料をコスト+適正利益まで下げて、MVNOの競争力を高め、回線利用料の収入を増やすことが考えられます。そうなれば回線コストでKDDIやソフトバンクより有利となり、その後の5Gや6Gの投資に有利となります。

尚、これらの値下げにより5Gの投資に悪影響を与えるとの論評が見受けられますが、そんなことはありません。例えば2019年度決算においてドコモは5,723億円の投資を行っていますが、これまでの投資分を案分して費用化した減価償却費が5,808億円計上されています。ということは投資資金は原価償却費で確保されており、営業利益0でも5,000億円以上の投資は続けられるという訳です。8,547億円の営業利益は主に配当や買内部留保に使われていることになります。ソフトバンクなども同様で、ソフトバンクGが米国スプリントや英国アーム社を買収した約6兆円の資金は携帯電話で得た利益が原資です。即ちソフトバンクGの派手なM&Aの資金の出し手は日本の家計だったことになります。賢い孫社長は菅官房長官が「携帯料金が4割下げられる」と発言すると、今後携帯電話事業には妙味はなくなると考え、ソフトバンクをIPOして株式の大部分を売却し、約5兆円を回収しています。このように携帯電話事業は錬金術に使われています。

これで分かるように、携帯料金の値下げによって5Gの設備投資が悪影響を受けることは全くありません。KDDIとソフトバンクは5Gの設備投資に今後10年間に2兆円を投じると発表していますが、年間2,000億円であり、今後4Gの設備投資が無くなることを考えれば、設備投資額はこれまでより減ると考えられます。それにこれまで携帯3社は営業利益20%という公益企業の規範を逸脱した搾取を続けており、これを内部留保として蓄積しています。これを考えれば携帯料金値下げに当たって5G投資への悪影響は全く考える必要がありません。