ドコモのシェアが50%になれば携帯料金問題はなくなる

12月4日にドコモが20Gバイトまで2,980円とする料金を発表し、多くの携帯電話業界人が画期的料金と述べています。しかし、携帯電話ユーザーの6割は7Gバイト未満のユーザーであり、ドコモの2,980円の料金は多くの携帯電話ユーザーにとってメリットがないことが分かります。ということは、菅内閣が取り組んでいる家計支出の軽減は実現しないこととなります。むしろこの新料金は、ユーザー数が多い7Gバイト未満の契約から20Gバイト契約に移行させる狙いがあると考えられます。KDDIおよびソフトバンク(ドコモも)は、7Gバイト未満の契約が収入の多くを占めていることから、今回のドコモの新料金にはあまり影響を受けないと予想されます。今回のドコモの新料金も毎度おなじみの自社にもあまり影響なく、他社にも殆ど影響を与えない協調維持値下げのように感じられます。

ドコモは12月中に7Gバイト未満の容量の契約についても新料金を発表するということなので、多くのユーザーにとってはこちらが楽しみということになります。これで余り下がらなかったら一挙に失望感が広がります。

ただし、10月のドコモTOBの発表から今回の新料金発表までのNTTの行動は果敢であり、NTTがこれまでのドコモ、KDDI,ソフトバンクの協調体制から離脱し、強いドコモを作ろうとしている決意は感じられます。2000年半ばまでドコモのシェアは約50%あり、この頃までは携帯3社による家計収奪はありませんでした。その後ドコモの独占が批判され、ドコモが営業努力を落としたところにKDDIとソフトバンクが営業攻勢を掛け、ドコモのシェアを奪っていきました。この頃の両社の営業攻勢は、料金競争によるものであり、ユーザーにはメリットがありました。両社のシェアが増加したところで、ドコモがどこまで落ちるか不安となり出したところに、ソフトバンクからシェア競争していても利益は上がらないから、シェアは現状で固定して「みんなで儲けようよ」との提案があったものと思われます。このままシェアが低下したらNTTから首を切られるドコモの経営陣には渡りに船だったと思われます。以後3社は取引条件をほぼ同じとし、乗り換えには高い違約金を課すことによって、シェアを固定し高い利益を上げられる協調体制を確立しました。

しかしこれは良く見ると若者のユーザーはソフトバンクやKDDIが多く、将来ドコモのシェアが下落し収入が減少する仕掛けになっていることが分かります。NTTの経営陣はここに危惧を抱いたものと思われます。従って今回の新料金も使用量が多く、自分で手続きができる若者ユーザーの獲得を狙ったものとなっています。同時にドコモがかっての強さを取り戻すには、若者だけでなく全ての年齢層でユーザーを取り戻す必要がありますので、今月に予定されている7Gバイト未満の契約の料金設定もKDDIやソフトバンクのユーザーを奪える魅力的な料金設定になっている可能性があります。

それにドコモは携帯回線を多くのMVNOに貸し出しており、MVNOのユーザー数が増えればドコモの収入が増える関係にあります。これは携帯回線の投資にとって有利であり、ドコモはMVNOへの回線使用料も大幅に引き下げてくると考えられます。

これらの料金政策によりドコモとMVNOのシェアは今後増加すると考えられ、これらのシェアが50%に達すれば、携帯3社の協調体制は完全に崩壊し、ドコモが携帯料金のプライスリーダーになると考えられます。やはり公益事業には公益企業体質のあるプライスリーダー企業が必要であり、強いドコモ復活は喜ぶべきことだと思われます。