財政調整基金が底をついても賞与は前年並みのお気楽自治体
都道府県の貯金である財政調整基金がコロナ対策などで取り崩され危機的な状況を迎えているようです。この10月末時点で都道府県すべての財政調整基金の総額は4,592憶円で2019年度末の1兆9,370億円から4分の1以下になっています。
このうち熊本県では7月の人吉豪雨の対応で財政調整基金を取り崩してしまい残高0ということです。そのため県独自のコロナ対策も打てないようです。また京都府の残高も2,000万円ということであり、コロナ対策に支障が出ているようです。
財政調整基金は税収の余りなどから積み立てられるので、人口や法人の本店が多い東京都や大阪府など都会の自治体が豊かとなり、これらが少ない地方自治体が貧弱となります。熊本県などはなかなか貯まらない中で自然災害が続いたことから底をついたようです。
この基金は特別の支出に備えるためのものであり、通常各自治体の税収不足は地方交付税交付金で補填されるため、住民サービスに支障を来すことはありません。しかしこれが地方の税収が少ない自治体が努力を怠る原因になっているように思われます。例えば住民1人当たりの所得は、1位の東京都と下位の自治体では倍以上の差があり、最低賃金も20%くらいの差があります。しかし公務員の所得はせいぜい5%しか違いません。これは地方自治体の税収の不足を国が交付金で穴埋めしているため、ある水準の税収入があることになり、公務員の所得が均されることになっています。この結果、地方自治体の住民の所得は東京都の半分だけど公務員の所得は殆ど同じという公務員天国が生まれます。このため各自治体の公務員は、住民の所得向上に関心がないことになります。公務員の所得が自治体の税収に連動していれば、自治体の公務員は自治体の住民の所得向上に一生懸命になるのは当然です。これがそうなっていないのです。
今年の日本の税収は昨年の64兆円に対し、50兆円程度と10兆円以上(約20%)減少することが予想されています。にもかかわらず人事院は、今年の公務員賞与を昨年並み(98.9%)支給するよう勧告し、殆どの地方自治体がこれに倣いました。民間では会社の収入が減れば確実にその分以上賞与は減少します。今年赤字に転落したANAは冬の賞与を0とし、今後の給与水準も3割落とすと決めています。これが普通の遣り繰りと言うものであり、税収が20%減少しても賞与は減らさず、ましては給与の削減など頭にない自治体の姿勢は異常です。どうやって遣り繰りするのでしょうか。日本の国債発行残高は今年末で1,000兆円を突破します。これはGDPの200%程度であり、世界に類を見ないレベルです。これを税収で返済するのは不可能なことは明白です。どうも日銀保有の国債残高は、債権者(日銀)と債務者(財務省)が実質同一であることから、債務者と債権者の混同により消滅するカラクリのようですが、もしこの事態が起きれば円での国際決済が停止され、日本は大混乱に陥ると考えられます。これを防ぐためには、地方自治体レベルで収支を均衡させることが必要となります。
*12月6日の日経電子版によると政府は自治体のこのような状況に鑑み、地方創生臨時交付金という名目で1兆5,000億円を予算措置するとのことです。今年の税収が20%程度減少する中でその財源は赤字国債となります。もう赤字国債に慣れっこになって、日本の通貨制度の破綻に向かってまっしぐらです。若者は声を上げないとしわ寄せが全部行きますよ。