新規国債発行額112兆円、ロック歌手世良公則さんのツイートは正しい

政府の2020年度(今年度)予算の一般会計税収が当初見込みの63.5兆円より8兆円程度下振れて55兆円程度となる見通しとなったという報道です。目減りした歳入の穴埋めやコロナ対策の歳出拡大により、今年度の新規国債発行額は112兆円と歴史上初めて100兆円を突破し、また歴史上初めて国債残高が1,000兆円を突破します。その結果対GDP比は200%程度となり、世界(悪くても100%程度)でも例を見ない劣悪な数字となります。これは2年分のGDPを全部国債の返済に充ててやっと解消できる額であり、実質的に解消できないことを意味します。日本の場合国債残高の約半分(9月末で約542兆円)を日銀が保有しており、日銀は国(財務省)に返済を迫ることはないため、ギリシャのようなデフォルト問題は起きません(ギリシャ国債の大部分は外国の銀行が持っていた)。新規発行国債は、一旦銀行、生保などの一般金融機関が購入し、その後それらの金融機関から日銀が購入しています。これは日銀が財務省から直接引き受けることが禁止されているからです。でも市中の金融機関から日銀が国債を買い取り半分以上も保有している状態は、日銀が財務省から直接国債引き受けた状態と同じであり、脱法状態と考えられます。このためアベノミクス以前は日銀保有の国債はできるだけ多くならないようにしていましたが、アベノミクスでこの制約を取っ払ってしまいました。その結果日銀が持つ分には国債はどんなに多くなっても構わないという動きになっています。

このままいけばどうなるのでしょうか?これについては、答えることがタブーになっているように思われます。答えは単純で、日銀の出資口数の55%は財務省であり、会社で言えば日銀は財務省の子会社だから、債務者(財務省)と債権者(日銀)が同一人ということになり、法律上混同で債権・債務は消滅してしまいます。即ち、日銀が持つ国債は消滅することが予定されています。だからどんどん保有できるのです。銀行や生保などは顧客の預金や保険掛金で国債を購入しているため、国債が返済されないと大損となりますが、日銀は最終的に日銀券を発行して国債を購入することができるため(*現在は銀行が預け入れた当座預金約540億円で購入している)、返済されなくても損をするのは印刷代(紙幣を印刷すれば。今は紙幣を発行せずデジタル処理が多い模様)だけです。だから国債が返済されなくて日銀は大して痛みません。これを知った皆さんは、なるほどと思うと同時に「これって危なくない?」と思うと思います。実際危ないのです。日銀が国債の大部分を持つ限り、国債の取り立てに伴う混乱はないのですが、それだけ金融機関等が持つ日銀券が増えるため、これが融資や投資に回れれば街に出回るお金の量が増えます。普通ならインフレになり物価が高騰するのですが、日本の場合インフレになっていません。それは国内の生産活動の不足を国債で補填しているためであり、余剰のお金が発生しているわけではないからです。しかしお金の量が増えているのは事実なので、その増えたお金は貯金や株式市場に回っていると思われます。だからこのコロナ禍においても株式は上がり続けるのです。このままいけば日本では毎年の予算のうち税収は半分で、残りの半分は国債を発行して賄うのが常態化すると思われます。そして最後には日銀保有の国債は、債権と債務の混同(債権者と債務者が実質同じ)で消滅させようということになります。国内ではこれで済むのですが、国際的には日本の通貨制度の破綻と捉えられ、暫く円による国際決済、円による外貨の購入ができなくなると考えられます。その結果、貿易や海外旅行が出来なくなり、大混乱を招くと考えられます。

12月16日のヤフーニュースに歌手世良公則さんが、今年の国債発行が112兆円となり国債残高が1,000兆円を超えることについてツイートした記事が出ていました。

「『コロナ経済対策で、国の借金が過去最大』『国民の負担が増え国民一人あたり1千万円』等メディアが報道 良識のある経済学者や専門家が長年これは真実では無いと否定」「しかし人々は池上彰氏が発する『国民負担説』を信じている 問題なのはこれを信じる多くの国会議員の存在だ」

というツイートですが、概ね正しいです。テレビでしか世良さんを知らない私は、世良さんの意外な一面を知って驚いています。少し違かなと思うことは、日銀保有の国債は返済を迫られることはなく、混同で消滅するので、国の借金ではありません(当然国民負担ともならない)が、銀行等などの日銀以外の者が保有する国債は、国が返済しなければならないので、国の借金です。そのため国民に負担が掛かってくる場合があり得ます。しかし、これを日銀が買い入れてしまえば、返済せずに消滅させることが出来ます。国債でも銀行などが保有する分は、預金などが国債に変わっただけで、資産は増加しませんが、日銀が保有する分(約530兆円+112兆円=642兆円)については、日銀は新たに紙幣を印刷し国債を購入していますので、この分国内のお金の量が増える、即ち国内の資産が増加することになります。即ち、日銀保有国債の増加は、国民の借金の増加ではなく、資産の増加になることになります。この点で多くのマスコミは嘘の報道をしていることになります。それは政府にとっては国債残高がこれ以上増加することは憂うべきことであり、このため政府の広報機関であるマスコミを使って国民に危機感を持たせようとしているからです。日銀保有国債は法律的には混同できれいに消滅するのですが、この状態は国家経営としては破綻であり、日本は一時的に国際社会から隔離され、IMFなどの国際金融機関の管理下に入ると考えられます。政府としてはこの状態は何としても避けたいところです。そのため嘘の報道を行い、危機感を煽っているのです。

国債発行が膨らむのはGDPが不足して、税収が足りないためです。昨年の日本のGDPを580兆円とすると税収はその10%の58兆円となります。これに対して日本の予算は約100兆円ですから、GDPが1,000兆円になれば税収が100兆円となり、予算を税収で賄うことが出来ます。これから考えると、予算を税収で賄い国債の発行を0とするためには、GDPを現在の580兆円から1,000兆円に増やすしかありません。この他に増税で税収を増やすことが考えられますが、所得に対する公的負担率(税金、年金掛け金、健康保険料などの割合)が45%に達しており、もう増税余地は少ないと思われます。

従ってGDPを増やすしかないのですが、問題はどうやってGDPを増やすかです。これについては菅首相のブレーンと言われるデービット・アトキンソン氏が輸出倍増戦略を提唱しており、私もこれしかないと思います。関心がある方はアトキンソン氏の著書をお読みください。