学術会議問題は会員に連なる主流派学者とそれ以外の学者の対立が背景?
最近学術会議問題はすっかり話題にされなくなりましたが、何らかの見直しがされる方向にあるようです。自民党のプロジェクトチーム(自民党PT)は政府から独立した法人格への組織変更を求める案を取りまとめ、学術会議側は現状の組織体制を基本とし、提言や広報などの事務局機能の拡充や会員選考過程の透明化などの改善を図るとしているようです。これの基づき政府は年内に改革の方向性を決める方針だということです。
自民党PT案と学術会議側案で共に出て来るのは、会員の選考過程に関する見直しです。
自民党PT案では、現在行われている会員の推薦による方式を「第三者機関による推薦」などに変えるよう求めています。学術会議側でも情報開示によって選考過程の透明化を図るとなっています。両者が改善点として取り上げたということは、ここに今回の学術会議問題の本質があるのではないかと考えられます。これまで学術会議の会員は現職の会員、とりわけ幹部会員の推薦により決まっていましたから、最初に会員になった学者に連なる学者(門下生、同じ考え方の学者、同窓など)が延々と会員になることが想定されます。これが学術会議の主流派を形成していることは容易に想像できます。もちろん主流派外からも顕著な実績を上げた学者が入ることはあるでしょうが、主流派にはなりえないし、推薦権も持たないことが多いと考えられます。こうして学術会議は主流派のサロン化し、主流派に連なっていない学者にとっては、よその世界の団体になってしまったのではないでしょうか。そのため、学術会議問題も会員と会員に連なる学者が激しく反発しているだけで、学者全体の動きにはなっていないように思われます。むしろ学術会議には見直しが必要という声がサイレントマジョリティであり、その見直しのポイントが会員の選考方式にあるように思います。やはりこれは自民党PT案のように第三者機関で研究実績に基づき選ぶのが望ましいと思われます。そうすれば選ばれること自体が名誉となります。今の会員による推薦方式では近い学者によるリレーになっているように見えます。
第三者機関などで選考すれば、学術会議は「科学者の内外に対する代表機関」となるので、「科学の独立性・政治的中立性を組織的に担保するため」できるだけ政府から独立した機関であることが必要となります。その点では、自民党PTが独立後も政府による運営費の拠出を認める一方、競争的資金や寄付など「自主的な財政基盤」を求めたことは当然のことと思われます。現在学術会議は法律上内閣総理大臣が「所轄」することになっていますが、これは事実上不可能であり、学術会議を担当する官僚が「所轄」していたのが実態だと思われます。そしてこの担当官僚が学術会議には問題があると考え、今回6人の会員の任命を拒否してあたかも菅首相が問題視しているように見せかけたと思われます。
このように考えると今回の学術会議問題は、学術会議会員を独占する主流派とその流れから外れた多くの学者との対立が背景にあり、この実態を問題視した学術会議担当の官僚が杉田官房副長官らを動かし、学術会議見直しに導いたように思われます。菅首相自身はあまり興味がなく、どうでも良い問題だったのではないでしょうか。