総務省がスマホ乗り換え相談所?これぞマッチポンプ!

総務省がスマホ乗り換え相談所を設けるとの報道です。これぞマッチポンプの典型だと思います。マッチポンプの直接的意味は「自らマッチで火をつけておいて、それを自らポンプで水を掛けて消すこと」であり、転じて「自ら問題を起こしておいて、取り繕うために自ら問題の解決をもちかける行為」のことです。携帯電話による約14兆円の家計収奪制度は総務省の主導のもとに作り上げられたものです。従ってこの状態を解消しようとすれば総務省が携帯料金高止まりの原因を取り除くしかありません。しかし総務省はこちらの方には全く熱心ではありません。まるで総務省の役割は、携帯3社の利益を極大化することだと考えているようです。そのため2019年8月に当時の菅官房長官が「携帯料金は4割値下げする余地がある」と発言し、総務省に値下げを指導するように促しても総務省は全く動きませんでした。有識者会議を作り検討しているポーズは見せるのですが、この有識者会議は業界関係者を集めたものであり、結論は現状維持になることが予定されていました。このように総務省の担当部局が携帯3社の利益の極大化に熱心なのは、退官後携帯3社や関係会社に天下りするためです。これは誰が考えても事後収賄の構図です。この典型例が総務省で通信政策部門の中枢を歩み事務次官にまでなった桜井俊氏の電通への天下りです。電通は携帯3社から多額の広告費が流れていますので、桜井氏の総務省在官中の貢献に報いるにはとっておきの企業です。それに電通は放送・通信・マスコミ業界のフィクサー企業であり、元事務次官の天下り策としての格も申し分ありません。

昨年9月菅首相が誕生し、高市総務大臣から武田総務大臣に変更となりましたが、総務省の担当部局は大喜びだったと思います。それは、高市総務大臣は通信行政や関連法制を熟知し、担当部局を飛び越えて大臣権限を使って通信料金を下げようとしていたからです。2018年9月の高市総務大臣就任からわずか2カ月後の11月にはMVNOの日本通信がドコモの音声通話卸料金値下げの大臣裁定を求め、高市総務大臣は翌年2月にはこれを認めています。これは抵抗する官僚抜きに大臣権限で携帯料金を下げられる妙手でした。それもこれにより携帯料金高止まりの根本原因である回線貸出料の値下げに道筋を付けられます。これは相当有能な大臣でないと打てない手です。その後コロナにより電気通信紛争処理委員会での審査が長引き、6月にやっとドコモに新しい音声通話卸料金の設定を命じる大臣裁定が下ります。こんな中で通信行政に疎い武田総務大臣に交代になったことでこの政策にもブレーキがかかります。先ずMVNOに対する通信回線貸出料の値下げは3年間かけて行うことになりました。高市総務大臣なら昨年の12月に一挙に行っていたと考えられます。武田総務大臣は口では威勢が良いのですが、料金値下げに繋がる有効な手段は何ら持ち合わせていません。そのため少しの値下げで武田総務大臣に花を持たせれば、大きな値下げを阻止する政策を認めさせられます。官僚にとっては御しやすい大臣です。そこを見透かされソフトバンクとKDDIは、全く家計には恩恵の無い大容量の値下げ案を発表し、お茶を濁しました。これを当初評価していた武田総務大臣もユーザーから批判の多さに驚き、更なる値下げを迫りましたが、KDDIの高橋社長からは「国には値下げを指示する権限はない」と突っぱねられてしまいます。どちらが偉いのは分からない状態です。そこで影の総務大臣である菅首相が動き、NTTがドコモを買収することを認める代わりにドコモは思い切った値下げ案を出すことになったようです。それが12月のahamoの発表です。ahamoのプランはその前にソフトバックやKDDIが出したプラントと比較したら驚きがありましたが、携帯電話のユーザーの約6割は7Gバイト以下の契約であり、ahamoの20Gバイト以下2,980円という料金は値下げになりません。ソフトバンクやauもahamoを真似た料金プランを出してくると思われますが、各社とも収入の大部分は7G以下の契約が占めており、大きな減収にはなりません。3社の2021年度の収入は2020年度並みに留まると思われます。即ち、菅首相が言う4割値下げなど夢の夢であり、家計の多くが値下げを実感できないと思われます。

家計が値下げを実感できるようになるためには、携帯料金の値下げを阻んでいる根本的仕組みを是正する必要があります。それは先ず通信回線の貸出料をコスト+5%程度まで下げ、携帯3社とMVNOが同じ土俵で競争できるようにすることです。次に乗り換えの障害となっている旧契約の高額な解約金(9,500円)を新契約並みの1,000円に改めることです。そもそも9,500円の解約金は不合理であるとして1,000円に下げられたのですから、これが維持されているのがおかしいのです。それにこれは解約防止のためであり、競争制限行為および優越的地位の乱用そのものです。この2つことをしない限り携帯料金値下げの効果は実感されません。今回総務省がスマホ乗り換え相談所を設置する計画は、総務省がこれらの携帯料金が下がらない根本的原因を覆い隠すためのポーズです。