日本医師会のどこか他人事の空騒ぎ
コロナの感染拡大で緊急事態宣言が1都2府8県に出される事態になり、更に緊急事態宣言の発出を望む自治体が相次いでいます。その原因はコロナ重症患者を受け入れる病床数が逼迫してきたからです。マスコミ報道では医療崩壊という言葉が使われていますが、これが国民の多くを疑心暗鬼にしています。それは我々が通院している民間病院はがら空きであり、中には来院患者数が少なく経営が苦しくなっている病院もあるからです。その実態を目にすると「病院は暇なのに、なんで医療崩壊なのか?国民を脅しているな。」と考えたくなります。
実際日本のコロナ感染者数は欧米より遥かに少なく(人口1000人当たり日本1.70人、米国56.67人、英国32.82人)、病床数は多く(同日本13.02、米国2.77、英国2.54)なっており、欧米で医療崩壊が起きていないのに、日本で起きるはずがないのです。
それを声高に叫ぶとすれば、何かカラクリがあるはずです。どうも日本の場合、感染症対応病床は地域の公立病院に少数ずつ割り振っており、絶対数も少なくかつ不効率になっているようです。また感染症は厚生省感染症班の管轄で保健所や感染症病床がある病院の医師らのグループで対応するとされてきたため、その他の民間病院は自分たちの管轄外という意識のようです。その結果、今医療崩壊と言われていることの実体は、感染症(コロナ)入院治療体制の破綻であり、その他の民間病院の入院治療体制は健全に機能しているようです。これを明確にせず、医療崩壊という言葉を使っていることから、多く国民の疑心暗鬼を生んでいます。
最近日本医師会の中川会長が頻繁に記者会見を開いていますが、話に具体性がありません。1月13日には、「全国的に医療崩壊は既に進行している」と言い「このままでは医療崩壊から医療壊滅へ」とするフリップを掲げたと言うことです。中川会長は医療崩壊について「必要な時に、適切な医療を提供できない。適切な医療を受けられない」状態であり、医療壊滅は「必要な時に、医療自体を提供できない。医療自体を受けられない」状態と説明し、「地域の医療提供体制は新型コロナ医療とそれ以外の通常の医療が両立してこそ機能しているといえる。両立できなければ、医療崩壊の状態」と述べ、「首都圏など、緊急事態宣言の対象地域において通常の入院患者の受け入れを断るなど、すでに医療崩壊の状態になってきている」「このまま感染者数の増加が続くと、医療崩壊から医療壊滅になってしまう恐れがある」と訴えたということです。
これに対してネットでは、コロナ患者受け入れに消極的な民間病院、開業医の団体である日本医師会がこんなこと言っても響かない、近所の病院はガラガラ、という声が多く書き込まれています。私も同感です。身近ではガラガラの病院が多いのになぜ医療崩壊なのか?ましては医療壊滅とは何?と思ってしまいます。中川会長の説明には具体的データの裏付けがなく、おどろおどろしい医療崩壊や医療壊滅という言葉が乱舞しているだけです。ビジネスの世界では具体的データを示さず、このような抽象的言葉を使う人は信用されません。中川会長の説明は、話がポエムとも言われた安倍前首相に似ています。具体性が伴っていないのです。安倍首相は秘書官の書いた文章を読んでいただけと言われていますので、中川会長も日本医師会のスタッフが書いた文章を読んでいるだけではないでしょうか。中川会長は脳神経外科医であり、感染症治療に経験はないし、興味もないのでしょう。それが医師会長として大所高所からの発言が必要と考えて、仰々しい言葉を用いているように感じられます。中川会長は、1月15日には菅首相と面会し、全国に緊急事態宣言を出すよう要請したということです。この間中川会長は、参加の民間病院の協力については何も述べていません。これは戦場の外にいて戦いに加勢する気がないのに、指揮命令に口を出すようなものであり、菅首相としては「何を行ってるのだか」という気持ちだったのではないでしょうか。このような中川会長の態度は、どこか他人事の空騒ぎのように感じられます。