国立文系はリベラルアーツ学部1つでよい
大学入学共通テストが終わり、これから個別の大学の入試が本格化します。今年は入試の内容を変えるところもあり、志願者数が大きく減少している大学があるようです。特に早大の政治経済学部では入試に大学入学共通テストを取り入れ、数学1を必須としたことから、志願者が大きく減少(28%減)したばかりでなく、志願者の質にも変化があったと思われます。
早大政経学部の入試は4教科4科目と私立文系の3教科3科目型と国立文系の5教科7科目型の中間型となります。では今後更に入試科目を増やすかというとそれはないと思います。と言うのは政経のうち経済は、統計処理が多いので数学はよく使いますから、これが加わるのは当然のことだと思われますが、国立文系にある理科は必要がなく今後とも加わることはないと思われます。これにより早大政経は東大不合格者の受け皿の様相を強めると思われます。
さて国立文系ですが、相変わらず入試科目と乖離した学部構成をとっています。数学、理科を入試に入れながら、入学すると全く使わないため何のために入試に入っているのか意味不明です。私の頃は入学は専門学部ながら、実際は教養学部(1年半)と専門学部(2年半)の2学部制でしたから、大学は職業人養成というよりも高校よりはワンランク上の教養を付ける場と言う位置付けだったと思われます。一方私大は職業人養成の場という目的が明確であり、そのため文系の職種で必要とされる3科目を入試科目とし、大学では資格取得のための授業や就職に有利な英語教育に力を入れています。このため企業に就職するなら私大が圧倒的に有利であり、企業においても私大卒の方が評価が高くなっています。そのため国立文系においても教養課程を廃止あるいは縮小し、早くから専門課程を学ぶ私大の職業人養成型に近づけているところが多いように見受けられます。それでも私大は入試が3教科3科目であることから、3教科3科目の到達度は国立5教科7科目型より高い学生が多くなります。例えば3教科3科目で言えば早大、慶大は東大並みであり、MARCHや関関同立は東大京大を除く旧帝大と遜色ない学力です。従って国立大学も職業人養成型を目指すから、文系は3教科3科目型にしないと企業の高い評価は得られません。
なのに国立文系が5教科7科目型の入試を続けているということは、国立文系が育てる人材は3科目の到達度が高い人材ではなく、5教科7科目で水準を超えた到達度にある人材であることになります。このような人材を養成する教育はリベラルアーツと呼ばれるものだと思われます。リベラルアーツは人文科学・自然科学・社会科学の分野を横断的に学ぶ教育と言われており、米国ではその後専門大学院に進む前課程とされることが多いようです。日本で米国型のリベラルアーツ教育を採用しているのは、国際基督教大学(ICU)のみではないでしょうか(国際教養大学を挙げている資料もありますが、ここは英語教育大学の色彩が強いと思います)。学部で言えば東大の教養学部がありますが、こちらは文系の学部横断的性格が強いように思われます。私大では文系の学部横断的学部(学際学部)が増え、国立文系では文系と理系の垣根を越えて学ぶ文理融合学部が増えているようです。夫々入試の特徴から当然出て来る流れです。
私はこのブログの中で、当初国立文系の方向性として文理融合を提言し、学生としては文理二刀流を提言しました。それは企業に就職するのなら3教科3科目で高い到達度にある私大文系が圧倒的に有利であり、将来大企業の幹部は私大文系で占められ、国立文系は中間管理職に留まるようになると考えるからです。従って国立文系が企業で私大に負けない人材を養成するためには入試を私大と同じ3教科3科目型に変更するしかありません。しかし国立文系が養成する人材は企業戦士ではなく、社会で遭遇する問題を解決できる学力基盤(学力のインフラストラクチャー/学盤)を持った人材だと考えれば、5教科7科目の入試で良く、その場合は国立文系はリベラルアーツ教育(学盤教育)指向を明確にし、学部はリベラルアーツ学部1つで良いことになります。