日本経済新聞の牙城を壊すには企業広報ポータルサイトを作ればよい

購読部数の減少が止まらない新聞は絶滅危惧産業になっています。2020年度には280万部減少し3,500万部と、2000年の5,400万部からは1,900万部、約35%減少しています。そして2000年度には世帯購読率がほぼ100%だったのが、2020年度には61%まで落ちています。そして今後もこのペースで購読部数は減少すると予想されます。この結果、昨年9月の中間決算で朝日新聞は93億円の営業赤字に転落しましたし、毎日新聞は資本金を1億円に減資し、税法上の中小企業となりました。朝日新聞の場合、子会社の賃貸ビル事業やテレビ朝日が赤字をカバーしており、存続には支障ありませんが、新聞事業は継続的なリストラが必要となると思われます。新聞業界最大手の読売新聞も事情は同じで、新聞事業はリストラで凌ぎ、日本テレビ、読売巨人軍やよみうりランドなどのエンタメ事業で収益を支える事業構造にシフトすると思われます。

このような苦境の新聞業界の中で唯一盤石なのが日本経済新聞社(日経)です。2020年度については日経も購読部数は減少したと思われますが、朝日やよみうりなどの一般紙と比べると減少幅は小さいと思われます。これは日経が経済専門紙であり、会社員の必読紙となっており、コロナの影響は日経を取っている大企業の会社員には比較的軽微だったからです。更にトヨタなどの大企業の業績は急激に回復しており、日経の広告収入も回復していると思われます。このように日経の業績は日本の大企業の業績と連動しており、日本の経済が健在である限り、日経も健在であり続けます。また新聞のIT化にも熱心であり、日経電子版の有料購読者数は70万人を超えています。経済情報はスピードが重要であり、日経の電子版シフトは更に進み、そのうち紙版は無くなるかも知れません。これは新聞の将来像を先取りするものであり、日経は苦境に立つ新聞業界の勝者になるのは間違いありません。

こんな盤石に見える日経を壊す方法が1つあります。それは企業広報のポータルサイトを作ることです。日経は企業の御用紙とも揶揄されるように、日経の記事の殆どは企業から広報目的で流されたものです。日経の強みはこの広報情報ルートを抑えている点にあります。企業としては、自社の新商品や提携、買収、決算、人事などの情報を多くの顧客に流してくれれば日経でなくとも良いことになります。今は日経が一番効率的だから企業広報が日経に集まっています。

この流れを変える方法としては、企業広報のポータルサイトを作ることが考えられます。ヤフーのようなサイトで、企業広報情報に特化したポータルサイトです。企業は情報掲載料を支払ってそこに新商品発表や決算発表などの広報記事を載せることができることとします。広報記事は最初タイムラインに従って掲載され、その後アクセス数に応じて掲載されます。また企業ごとにも検索できることとします。自分が担当している会社の情報を常に仕入れておきたい会社員(日経の読者)は常にチェクするようになります。担当企業の情報収集はこれで十分だと分かれば、月4,277円と高額な日経電子版を辞める会社員が多くなるはずです。この料金は会社員にも負担になっているはずで、このようなポータルサイトが待ち望まれていると思われます。例えばヤフーやDeNAが立ち上げてもよいし、ベンチャー企業が立ち上げても良いと思います。いずれ日経の強力な地盤を崩すことができる魅力的な事業です。