高市元総務大臣の接待は、逆接待だった可能性が高い

東北新社が13名の総務省官僚を接待していた事実が判明し、まだまだありそうだなと思っていたら、NTTも3名の総務省幹部を接待していたと報道されました。3名の総務省幹部のうち山田審議官(当時)は既に辞任しているということで、お咎めなし、谷脇審議官が更迭されています。谷脇審議官は5,000円支払っており、割り勘の認識だったと述べていますが、場所や出された料理を見れば1人数万円することは分かったはずであり、全く子供じみた弁明です。

その後野田元総務大臣と高市元総務大臣もNTTから接待を受けていたと報道されていますので、これらの幹部の接待は大臣接待の露払いだった可能性が高いと思われます。

このうち高市元総務大臣は、2019年12月20日と、2020年9月1日に、いずれも澤田NTT社長、島田副社長、秘書室長の3人から接待を受けていたという報道です。これに対して高市元総務大臣は、会食の事実は認めた上で、「相手から会費1万円で言われたので、1万円払い領収書ももらった。オーバーしていたら嫌なので3人に私費でお土産(衣料品)を渡した。」と述べています。これも会場と出された料理を見れば、1万円以上することは直ぐ分かったはずです。そして会食費が1万円以上かかることが高市元総務大臣も分かっていたからお土産を用意していたことになります。要するに刑法で言うところの未必の故意(みなし故意)です。だから割り勘だったから接待ではなかったという理由は通りません。また会食の中では「業務に関する話はほとんどしなかった」と述べています。この言葉は野田元総務大臣も使っています。「ほとんど」ということは「ちょっとはあった」ということを意味します。企業で社長が出て来る接待においては、その前にお互い担当部署で話し合いが行われており、トップ同士の会食の場で業務に関する込み入った話をすることはありません。そんなことをしたら接待が台無しになります。接待に出席するということは、担当部署での交渉が合意に達した、または悪いようにはしないという意思表示であり、接待に引っ張り出しただけで担当部署は得点になります。だからこの接待がNTTから提案されたものであれば、高市総務大臣はものの見事にNTTの罠に嵌っていることになります。

しかし、この接待が行われた当時の状況を考えると、総務省からNTTにお願いすること(携帯料金の値下げ)はあっても、NTTから総務省にお願いすることは見当たりません。従って、この接待(会食)はNTT側から持ち掛けられたものではなく、高市総務大臣から持ち掛けたものである可能性があります。

高市元総務大臣は、2019年10月に2度目の総務大臣に就任しています。高市総務大臣に課された使命は、菅官房長官(当時)が主張していた携帯料金4割値下げの実現とその年の7月の参議院選挙でN国党が1議席獲得したことにより顕在化したNHK受信料値下げの実現だったと思われます。携帯料金値下げについては、大臣就任間もない11月に、NTTから提供を受けている音声通話の卸料金について日本通信から大臣裁定の申請が行われています。これは高市総務大臣就任早々の出来事であり、大臣権限を使ってできる携帯料金値下げの秘策として高市総務大臣サイドから日本通信に申請を働きかけたことが考えられます。NTTの澤田社長らと会食は翌月12月20日となっていますので、もしNTTから持ち掛けたとすれば、裁定に手心を加えてもらう意図があったことになりますし、高市総務大臣側から持ち掛けたとすれば、裁定前に解決することを働きかけたことが考えられます。高市総務大臣がお土産を準備していたこと、翌年2月には日本通信の申請を認める裁定を下していることを考えると、後者だった可能性が高いと思われます。だから接待したのは私であり、「断じて接待は受けていない」という強い反論になっているように感じられます。2020年9月1日の会食も携帯料金を下げるよう澤田社長にお願いするために高市総務大臣が声を掛けたことが推測されます。この前の6月には山田審議官、7月には谷脇審議官が澤田社長らと会食しており、携帯料金引き下げの交渉(バーターとしてのドコモの合併の承認)がなされていたことが伺えます。高市総務大臣が会食した9月1日には菅首相が誕生することが確定しており、総務省で菅首相と影響力を競う程になった高石総務大臣の続投は微妙な状況でした。ここでNTTから携帯料金引き下げを勝ち取れば高市総務大臣続投になったと思われます。そのために高市総務大臣としてはNTTの澤田社長に会い、携帯料金引き下げの決断を引き出したかったものと思われます。このように高市総務大臣とNTT澤田社長の会食は、外形上NTTの接待に見えますが、実態は高市総務大臣が仕掛けた会食(逆接待)だった可能性が高いと思われます。