所得税・消費税から資産税に移行するとき

2020年12月末の家計の金融資産総額は前年から2.8%増えて1,948兆円になったと言う報道です。内訳は現金・預金が4.8%増の1,056兆円、株式が0.7%増の198兆円、投資信託が5.1%増の78兆円などです。現金・預金1,056兆円のうち預金は955兆円であり、差額の101兆円は自宅に持つ現金、いわゆるタンス預金になるようです。また企業の金融資産も6.2%増の1,275兆円で過去最高を更新し、この内現金・預金は16.6%増の311兆円となっています。

2020年はコロナの影響で経済活動は不活発でしたが、株式市場が好調であり、金融資産の増加となったようです。

一方10-12月だけでも国債が21兆円発行されたことも金融資産の増加に繋がっています。鉄道や空輸、宿泊、旅行、飲食業界などでの所得の減少を国債発行による給付金の増加が穴埋めしたものと思われます。それでも2020年度の税収は50兆円前半と前年より約10兆円少なくなると予想されています。2021年度もそんなに変わらないでしょうから、予算(約107兆円)のうち税収が占める割合は50%程度となります。不足分は国債を発行して賄うことになりますから、空恐ろしい状態です。この状態ではいずれ国債は償還不能に陥るのは確実であり、そのため日銀引き受けに頼らざるを得なくなります。昨年12月末の日銀保有国債額は545兆円と全体の44.7%を占めます。日銀は実質的に財務省の子会社であり、財務省の外局と同じですから、債権者と債務者が実質的に同じだという理由で債権債務関係が消滅することになります(相続と一緒です)。それでもその際には一般投資家も一部放棄を求められる可能性がありますので、今後一般投資家は国債の引き受けに慎重になると思われます。

従って、今後はどうしても税収を増やす(または医療費や年金などで国民負担を増やす)必要がありますが、所得が増えない中で所得税や消費税の税率を挙げて税収を増やすことは難しいと考えられます。特に消費税の場合、消費の減退を招くことは過去の経験から明らかです。

そこで考えられるのが、資産課税の強化です。税収が増えない中でも家計や企業の金融資産は確実に増加しています。これは国債などで供給された現金が家計や企業で現金や貯金、株式などの資産として蓄積され、消費などのフローとして流れ出さないことを意味しています。従って、所得や消費などのフローに課税する徴税方法では、この状態に対応できないことになります。この状態に対応する徴税方法は、資産課税の強化しかありません。例えば、家計の金融資産1,948億円と企業の金融資産1,275兆円の合計3,233兆円に1%の資産税を課すと税収は約32兆円となります。現在の日本の国家予算約100兆円を全部税収で賄うとすれば、約3%の資産税を課せば良いことになります。これで所得税や消費税は全部廃止できます。現在でも所得税や消費税で約60兆円課税されていますから、実質増税は約40兆円です。それもこれまで所得税や消費税として収入から徴収されていた分がなくなり、金融資産を取り崩して支払うことになりますから、日常生活は楽になるはずです。また資産課税は資産に応じた課税制度であり、公平な制度とも言えます。これにより国債の増加は止まりますし、国債が増加したとしても資産に回った分からは確実に徴税できます。今後日本では、個人の所得や消費などのフローが増えない中で、社会保障費などで国の支出は増え、それが関連業界や個人に資産として蓄積することになりますますので、資産課税へのシフトが不可欠です。