毎日新聞は日経の牙城を攻めた方がよい

2020年12月末の一般新聞紙の購読部数は前年より約280万部減少し、約3,500万部となっています。2000年の約5,400万部と比べると約1,900万部の減少です(率にする約35%の減少)。この結果新聞購読世帯は、全世帯の約61%となっています。朝日新聞は2020年9月の中間決算で売上高が403億円(22.5%)減少し、約93億円の営業赤字となったという報道です。朝日新聞の場合、優良賃貸ビルをいくつか保有しており、そちらの方の利益とテレビ朝日の利益で当面新聞事業を支えて行けます。新聞社の中で一番存続が問題になるのは毎日新聞です。朝日新聞のように賃貸ビルもテレビ局も持っていませんから、新聞販売部数の減少はそのまま経営危機となります。毎日新聞は今年1月15日の株主総会で資本金41億5,000万円を1億円に減資する決議していますが、これは発生する約40億円の減資差益で赤字を埋める目的であると考えられます。ということは、累積赤字が40億円近くに達している可能性があります。コロナの影響は今年もあると考えられますので、毎日新聞は崖っぷちに追い込まれていると考えられます。

毎日新聞の記者は優秀であり、他の新聞社やテレビ局で活躍しているようです。私は、新聞は購読しておらず、ネット版の短い記事を見ていますが、毎日新聞の視点が一番面白いと感じています。毎日新聞はネット版を強化して生き残りを図っているようですが、新聞の購読部数は今後とも大きく減り続けることは確実であり、今の一般紙という性格のままでは生き残りは困難だと思われます。と言うのは、一般紙の伝える内容はテレビや新聞以外のネットマスコミで十分であり、訓練された記者が書くと言う新聞の価値は発揮できません。新聞が生き残れるとすれば、専門知識を持った記者のみが書ける記事に特化する必要があります。それは日本経済新聞(日経)の行き方です。日経の2020年12月期の連結決算は、売上高3,308億円(-7.3%)、営業利益84億(-40.6%)、純利益13億円(-61%)となっています。単独決算は、売上高1,769億円(-6.3%)。純利益43億円(-60.3%)となっており、新聞事業の強さが際立っています。これは日経が大手企業のサラリーマンの必読紙となっているからです。日経は経済記事に特化しており、企業にネットワークを張り巡らし情報を収集しています。それも業界ごとに専門知識が必要であり、専門記者の数と質で他社と差を付けています。

経済情報の場合、情報伝達にスピードが求められますので、IT化をいち早く進めており、日経電子版の契約者数は2020年12月末で約275万人となっています。これでも2020年1月から比較すると約18万人減少していますので、コロナの影響が及んでいることが伺えますが、電子版は紙の媒体と比べて低コストであり、日経の強みになっています。

日経の情報源は企業の広報部であり、日経に流す情報は広報目的のものです。従って、日経の実体は企業広報をまとめて流す、或いは加工して流す新聞というものです。電子版と相俟って企業広報のポータル紙ということが出来ます。しかし日経電子版の契約が増えて来ると月4,277円はネットの購読料としては高すぎると感じることになります。それ以上に今後所得が増えない中で社会負担が増加することは確実であり、いずれ日経電子版の4,277円は負担できないサラリーマンが増加します。それに日経電子版は総合版であり、自分が必要とする業界以外の情報が多く含まれています。このため自分が欲しい業界だけの情報で良いから、安い電子版が欲しいというニーズが生じて来ます。

ここに他社が進出する余地があります。経済紙には日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイなどの専門紙もありますが、日経の牙城を壊す存在にはなっていません(フジサンケイビジネスアイは6月30日で休刊とのこと)。それは記者の質に問題があるためと考えられます。毎日新聞は経済記事でも優秀であり、優秀な経済記者がいるように思われます。従って今後の方向性としては経済分野を強化し、先ずは特定の業界で日経を上回る存在になることを目指し、そういう分野を増やして行く戦略が必要だと思われます。経済分野は資金の出し手は大企業であり、読者も大企業の社員が中心です。そのため一旦掴めば強力な読者となります。毎日新聞は日経の牙城を壊すことを目指さないと、生き残りは難しいと思われます。