スマホの音声通話は無料が普通になる
総務省は通信市場の競争環境などを議論する有識者会議「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」の場で、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの音声通話料金が高止まりしていると指摘し、有識者会議のメンバーでも同意する意見が多かったことから、携帯電話の音声通話料金が下がるのでないかとの報道です。これは最近通信データ料金の値下げが進んだことから音声通話料金の高さが際立ってきたから出てきたものと思われます。音声通話料金はここ10年間30秒20円で変わっていません。一方携帯3社は5分以内の国内通話は何度でも無料、かけ放題オプションは1,000円と言った30秒20円では考えられないような料金プランを出しています。社会的には通話量は減っている(2017年と2019年度で比較すると10%減)ようですが、携帯3社の通話売上は増えているとのことです。これは1,000円かけ放題などが実は実際の通話量より高くなっていることを表しています(プリペイドカードの使い残しのような状態)。この結果携帯3社の音声通話の営業利益率は軒並み高水準で、ドコモは30%を超えているようです。
これがあるためドコモは、日本通信の音声通話卸料金の値下げに応じず、日本通信は2019年11月総務大臣裁定を申請しました。2020年6月に総務大臣からドコモに卸料金を引き下げるようにとの裁定が出されましたが、ドコモは裁定期限の昨年12月末までに新しい料金を提案しませんでした。どうも今年になって妥結したようですが、日本通信の音声通話料金は30秒20円のままですので、この料金は変えないよう条件を付けたようです。ドコモは金城湯地である現状の音声通話料金を何としても死守する覚悟のようです。
この音声通話料金が10年間30秒20円で変わらない状態は、銀行の送金手数料が長い間変わらないのと似ています。銀行間の送金手数料は40年以上3万円未満が117円、3万円以上が162円で据え置かれてきました。これではキャッシュレス決済が進まないとして問題になり、全国銀行協会はこれを今年 10月1日から一律62円に引き下げると発表しました。これに伴い同じような状況にあった音声通話料がやり玉に挙がってきたのだと思われます。
今後携帯3社の協調体制で家計を搾取することに味を占めたドコモは、3社協調して現状の料金を守ろうとするでしょうが、もう無理な状況になっています。それは自らかけ放題サービスを提供しており、値下げが可能であることを示していますし、もう1つは無料通話アプリの普及です。LINEではかなり前から会員同士の通話は無料で出来るようですし、楽天モバイルでもLakuten Linkを使えば無料でできます。Lakuten Linkの場合、スマホや固定電話との通話ではほぼ支障ないレベルですが、ガラケイとの間では通話レベルが落ちるなど、アプリが全ての端末に対応できていません。しかしこれももう少しで解消すると思われ、そうなれば音声通話はアプリ通話が普通になり、料金がかかる音声通話を利用する人はいなくなると考えられます。ソフトバンクはLINE通話を使えばすぐに対応可能であり、楽天モバイルはこのままLakuen Linkを売りにして行きます。そうなるとauとドコモが残りますが、auは音声通話以外の通信周辺ビジネスを強化しており、こういう状態になることも想定済みです。問題はドコモで、音声通話料の占める利益の割合が高く(約30%)、かつ通信周辺ビジネスへの展開が遅れています。そのため光回線の2年縛り契約を代表として縛りを多用し、ユーザーを縛り付ける作戦をとっています。この阿漕さに嫌悪感を抱くユーザーは少なく無く今後ドコモ転落に拍車をかけそうです。