ドコモ・KDDIフック、公正取引委員会の出番
KDDI(au)が代理店向けマニュアルで「povoを宣伝に活用して客を集め、auの大容量プラン等にその場で契約させるように」と指示していたという報道です。povoは政府の要請に答えドコモが発表した通信料金値下げプランahamoに対抗してKDDIが発表したオンライン専用プランで、月間データ容量20GBで月額税別2,480円のプランです。これは従来6,000円以上していた料金を値下げしたもので、これに既存のユーザーがシフトしたらKDDIは大幅な減収になると予想されます。従ってKDDIとしてはなるべく既存のユーザーがpovoに移行することを防ぎたいところです。そのためにオンライン専用として、スマホの契約手続きから設定、操作までショップに依存してきたユーザーでは手続きができないようにしています。そのためpovoに移行するユーザーはメリットがあるユーザーのせいぜい10%と言われています。KDDIはこれを更に減らそうとしているようです。povoはショップでは手続きできませんから、ショップの誘引には使えません。しかしKDDIはpovoで誘引してpovo以外の高額な契約を結ばせろ、と指示しているのです。これは景品表示法、独占禁止法、電気通信事業法に違反しているおそれがあるということです。
同じことはドコモのahamoでもやられており、ドコモの販促マニュアルではahamoフックという言葉が使われているようです。要するにahamoで引っ掛けて高額な契約を結ばせろ、と指示を出していることになります。こうなると景品表示法、独占禁止法、電気通信事業法などという生ぬるい法律違反ではなく、刑法の詐欺罪に該当すると思われます。騙す意図が明確ですし、引っ掛かって高額契約をしたユーザーには損害が生じています。
携帯電話は電気やガス、水道と同じように国民の生活インフラであるにも拘わらず、国民搾取の手段になっています。電力会社の営業利益率は約5%ですが携帯大手3社の営業利益は約20%もあります。この原因は携帯3社が寡占状態を利用して横並びの料金を設定し、他社に乗り換えられないよう高額な違約金を設定した2年縛り契約を導入したからです。これだと競争は起きず、料金は高止まります。
こういう状態は不公正な競争そのものであり、まさに公正取引委員会の取り締まり対象ですが、公正引委員会は全く何もしませんでした。これが長く携帯3社による家計収奪が続いた要因の1つです。
そしてもう1つの要因は、監督官庁総務省の官僚が携帯3社と一体化していることです。彼らは入省し通信部門の担当となって以来携帯3社と接触を繰り返しており、身内化しています。そのため携帯3社が儲かることを自分の政策が良かったからと見做しています。だから料金値下げの発想はないし、2年縛りや高額な解約金などの悪辣な契約があっても是正させようとしませんでした。それをアシストしたのが業界人で組織した有識者会議です。有識者会議のメンバーは、表面的には第三者を装っていますが、携帯3社の利益のおこぼれに預かっており、最終的には現状維持の結論になっています。これは総務省の目論見通りと言えます。
このように携帯3社の不公正な取引方法を是正する任務を帯びた公正取引委員会が何もせず、監督官庁の総務省は携帯3社の味方なのですから、携帯3社の悪事はどんどんエスカレートしました。ドコモは解約防止のためインターネット上の解約に関するページを検索できないようにしていましたし、最近まで解約はショップのみとし、ネットでの解約を認めていませんでした。またドコモは、楽天やソフトバンクなどが2年縛りの廃止に動くなかで、これを維持していますし、旧契約では許されている解約金9,500円を契約移行の場合にも適用しているようです。また2年契約で9,500円の違約金がついた光回線契約と携帯電話契約をセットとして実質的に携帯電話の解約ができないようにしています。
このようにドコモが携帯業界の悪事を主導していますが、それと歩調を合わせたのが今回のKDDIです。総務省の担当官僚は、退官後通信業界に天下ることが生活設計の一部になっているようなので、総務省が改善を促すことは期待できないと思われます。あとは公正取引委員会ですが、古谷委員長になってなって携帯料金問題に積極的に取り組むような発言がありましたが、まだ音無しです。公正取引委員会には、その存在意義を発揮し通信業界の不公正な取引方法の一掃を期待します。