日本を変えられるのは「若者の党」だけ
菅首相は公務員の定年を65歳まで延長する法案を今国会に提出すると表明しました。これは働く意欲も能力もない公務員に60歳時の給与の7割を保証するものであり、無駄遣い以外の何物ものでもありません。これにより年金や健康保険料の負担を考えると給与の1.5倍の支払いが国に生じます。この法案の狙いは、公務員に年金支給開始までの生活費を補償することであり、それならば61歳から年金を支給した方が遥かに安く上がります(半分から3分の1)。日本を良くしようと言う意思があるのなら絶対にできない政策です。
日本の国債残高は約1,000兆円でGDP比約200%ですから、税収などで返済するのは困難です。いずれデフォルトするしかありません。国債のデフォルトというとギリシャを思い浮かべますが、日本の場合はギリシャのようにはなりません。ギリシャの場合、国債の保有者の多くは海外の金融機関だったため、新しい資金が入ってこなくなったため大混乱となりました。日本の場合、国債の保有者は国内投資家が大部分(8割以上)であり、状況が大きく異なります。それに決定的に違うのは、日本の国債の54.5%(2021年12月末)は日銀が保有していることです。日銀の出資割合の55%は財務省であり、会社で言えば日銀は財務省(国)の子会社です。子会社が親会社へ債権を持っていても取り立てたりしませんし、親会社が子会社を吸収合併してしまえば、その債権は消滅してしまいます。子供が親に借金があっても親が死亡し相続すれば借金が消えるのと同じ理屈です。従って、財務省は日銀保有国債についてはこのようにして消滅させることを想定しています。だから日本の実質的借金としての国債は日銀以外が持つ残り半分の約500兆円であり、これはGDP比約100%で米国並みだということになります。しかしこの日銀保有国債を消滅させる事態が起きれば、世界的にはデフォルトと見做され、日本の信用が暴落すると考えられます。その結果、短期的には、円の暴落、輸入物価の高騰、円が決済通貨として使えなくなる、円と外貨の交換停止などの混乱が生じることとなります。だからこの事態は何としても避けなければなりません。
今期の予算は支出106兆円で、収入の内訳は税収55兆円、国債50兆円が予想されます。税収は減少し、国債が増加する構造であり、日銀保有国債のデフォルトにまっしぐらに進んでいることになります。財務省および政府としては、この事態はなんとしても避けたいところですから、今後増税と国民負担の増加を打ち出してきます。収入が増えない中で大幅な増税は国民の反発を受け、政権与党が選挙で敗北しますので、それ以外の国民負担を引き上げて来ます。国民健康保険の自己負担率の引き上げや年金掛け金の引き上げと支給額の減額がなされます。国民健康保険は、今の3割負担から5割負担への引き上げは確実です。年金掛け金も2,3割引き上げになり、支給額は2割カットになると予想されます。それに定年が65歳に引き上げられたことを理由に年金支給年齢を70歳に引き上げます。このように増税ではない形での国民負担の引き上げラッシュとなります。このための布石が公務員定年の65歳引上げです。
この後国会では国会議員の年金引上げ法案が議員提案され、成立すると考えられます。
2006年まで議員年金が支給されており、年間126,600円を10年掛ければ65歳から412万円の年金が支給され、かつ任期1年毎に8万円加算されるという手前味噌な年金でした。これは国から7割の資金が投入されるから実現できたものです。自民党はこれを復活させる方針を持っているのです。当選してしまえば自己の利益しか考えない今の自民党議員なら必ずやってきます。これで国家財政は更に悪化します。
公務員65歳定年延長は、財政悪化の原因となるばかりでなく、若者の公務員になる道を閉ざします。公務員の定年年長により定員的には若者の採用は不要となるはずです。それではいけないとして少しは採るでしょうが、大幅に減少するのは間違いありません。既に子育ても終わった親世代が子供の職場を奪ってどうするのでしょうか。そのうち親が辞めればその後に子供を公務員に採用するという制度になるかも知れません。
日本はお隣韓国に1人当たりGDPで抜かれたという資料もあり、それは韓国企業の待遇からも伺えます。韓国の大卒大企業社員の1年目年収は約410万円と報道されています。日本の大企業はせいぜい300万円台なので、相当韓国企業が高いことになります。また最近の報道によるとサムスン電子の従業員(約11万人)の平均年収(2020年度)は1,220万円となっています。サムスン電子は日本でいうならトヨタですが、トヨタの従業員平均年収は865万円です。この他の韓国大企業の従業員平均年収も総じて日本の大企業を上回るレベルです。これを見ると経済的には日本より韓国の方が確実に豊かです。
何故こんなことになったかというと、それは輸出の差です。韓国のGDPに占める輸出の割合は42%(2017年度のデータ)ですが日本のそれは約16%です。韓国は人口が少なく(約5,100万人)国内市場が少ないからと輸出に力を入れた結果、世界有数の輸出国になりました。一方日本も1980年代後半のバブル前まで、資源がない日本は加工貿易で生きていくしかないと言い輸出に力を入れていました。それまでラジオやテレビ、船、自動車、半導体、液晶とメイドインジャパンが世界を席巻していました。それが1990年からのバブル崩壊を境にして一挙に衰退していきました。日本の輸出品の地位を奪っていったのが韓国です。当初は人件費が安ことが強みでしたが、持ち前の闘争心で品質でも日本を追い抜き、日本の輸出を奪っていきました。その結果が42%と16%の差になっています。
この差は国債依存率にも表れています。日本はGDPに占める国債の割合は約200%ですが、韓国は約49%であり、世界でも極めて健全なレベルです。これは輸出代金の外貨がウォンに両替され国内に溢れるからです。日本でバブルを生んだのもこの状態でした。日本は輸出が減ったため、外貨の両替で国内に出回る円が少なくなり、代わり日銀引き受けで国債を増発し、国内に円を溢れさせています。
従って、今後日本の経済と財政を建て直すためには、輸出を増やすしかありません。韓国並み(42%)まで引き上げれば、国の予算は税収で賄える(国債発行は不要)ようになります。それには韓国に奪われた輸出品を取り返せばよいのです。もう賃金は韓国の方が高いわけですから、製造技術と品質の勝負になります。これで韓国に負けるようなら日本は貧乏国で終わるしかありません。
これには10年以上の長期計画が必要であり、今の老人政治家にはできません。菅首相72歳、麻生財務大臣81歳、二階幹事長82歳であり、これくらいの年齢になると明日生きているかも不安になりますから、そんな長期的な計画は立てられません。従って公務員の定年年延長のような選挙目当ての政策を出してくるのです。老人政治家の政策の背景には、いつ死ぬか分からないことから来る「後は野となれ山となれ」の観念があります。
従って、日本を建て直すにはどうしても20代、30代の若者が中心になる必要があります。そうすれば10年以上の長期戦略が建てられます。これをしないと一番苦しい目に会うのは20代、30代の若者です。このままいけば日本は確実に破綻します。これを避けるためには、次の総選挙までに20代、30代が中心の「若者の党」が結成されることが必要です。自民党や立憲民主党の若者が集まってもよいし、議員ゼロでも始めても必ず成功します。18歳から30代の若者は全有権者の2割程度いますし、それ以上の世代の多くも若者の党を応援します。
現在衆議院議員のうち40歳未満の割合はわずか8%です。有権者の人口比では20%程度ありますから、今の衆議院は若者の声を反映していないことになります。これは選挙に行かない若者に一番問題がありますが、老人政治家も若者議員が増えないよう工作しています。例えば、選挙権は20歳から18歳に引き下げられましたが、被選挙権は衆議院25歳、参議院30歳のままです。各党とも引き下げが必要と言っていますが、引き下げる具体的な動きはありません。これは若者の政界進出を妨害するためです。
老人政治家の今の政策は、国家財政破綻にまっしぐらのものであり、寿命が尽きようとしている老人の焦土作戦とも言えます。若者は「若者の党」を結成し、自らの未来を自ら築く必要があります。