NHK受信料値下げに反対する朝日新聞は餓鬼道に落ちた

4月12日の朝日新聞デジタルに4月7日に同紙に掲載されたという同社論説委員の論説(社説)が掲載されていました。題名は「NHK値下げの社説を書いた 総務省に呼び出された」となっていました。新聞社の論説は思えない題名に惹かれ、読んでみました。内容を記事から引用します。

==1月の末、総務省に呼び出された。その日の朝刊に私が担当した社説が載っていた。総務省担当の同僚から電話があり、役所の人が記事のことで話をしたいと言っているという。いったいなんだろう。

霞が関へ出向くと、初対面の課長と広報室長が出てきて「事実と異なる。抗議させていただきたい」と言った。社説で私は、NHKが受信料値下げを決めた背景に政治の圧力を感じると書いた。大臣が再三値下げを迫って方針が変わったからだ。しかも、実際の値下げ幅はまだ決めていないとNHKが説明したのに、5日後に菅義偉首相が国会で「月額で1割を超える思い切った引き下げ」を宣言した。その2日後、NHKは首相の発言をなぞるかのように「衛星契約の1割下げをめざす」と表明する。まるで国営放送みたいだ。

だが課長は、「総理演説の前にNHKが会見で自ら値下げ幅を表明している」と主張した。「説明がうまくない」ので伝わらなかっただけだという。たしかに、たとえ話のなかで「300円」という数字は出たが、単なる例示を「表明」というのは無理がある。私は「NHKが自ら値下げ幅を明らかにしたとは考えていません」と答えた。すると「何が言いたいかというと、政府の圧力でNHKが1割値下げを決めたなんて話じゃないんですよ」「圧力だ、口出しだ、とネガティブな言葉で批判されるが、我々は大臣として持っている権限の中で意見として申し上げている」という。(以下一部省略)

もう一つ課長は気になることを言っていた。社説で「NHKが唱える『自主自律』とはいったい何なのか」と書いた部分についてだ。「NHKの経営に自主自律なんてないですから。そんなことおっしゃる方は初めてなんで、びっくりしてます。自主自律は放送番組の編集の話。人事も金も握られてる。もうちょっと制度を勉強してください」「特殊法人が好き放題に経営ができるなんて仕組みは、日本にないです」==

論説委員は表面的には政治の圧力を批判していますが、根本はNHK受信料の値下げに反対ということです。もし賛成ならば、そこに政治の圧力があったとしても結果オーライです。事実こんな論説を書いた新聞は他にありません。常識ある人であれば、総務官僚が言っている通り、政治が介入してはいけないのは番組の編集であり、国民生活に影響がある受信料問題は含まれないことは直ぐ分かります。とういより、国民の8割がNHK受信料は高過ぎ、スクランブル化を望んでいる中で、受信料問題を政治が放置していることが問題なのです。受信料問題を解決できるのは政治だけなのです。それを総務大臣や首相の受信料値下げ発言はNHKへの政治の介入だというのは、思考回路がおかしいとしか思えません。朝日新聞が本当に社会問題の解決に役立ちたいと思っているなら、「1割の値下げは問題の解決に繋がらない」、「このコロナ禍で生活が困窮する国民のため1年間受信料の徴収を停止すべき」、「スクランブル化に向け放送法を改正すべき」などと主張すべきです。

この論説委員(本当に論説委員?単なるブロガーとしか思えない)がなぜこのような恥知らずの主張をしているかと言うと、朝日新聞は2020年9月の中間決算で約93億円の営業赤字となり、今後放送子会社のテレビ朝日の利益に頼らざるを得なくなったからです。テレビ局は放送利権の塊であり、その中心にNHK制度があります。NHK制度が現状のままであればテレビ朝日も現状の利益水準を維持していくことが可能ですが、もしNHK制度が変更されるとなればテレビ朝日も無傷では済みません。例えばNHKが公共放送と民間放送に分割されれば、テレビ朝日も大きな影響を受けますし、電波使用料の引き上げも予想されます。朝日新聞は、今回受信料が例え1割でも下がれば、これがきっかけとなりNHK制度の大幅な変更、放送法の大幅な見直しに繋がること危惧し、この論説の掲載を許可したものと考えられます。

朝日新聞は、2019年7月の参議院選挙でN国党が1議席獲得した際には、新聞の中でN国党を最もたくさん取り上げています。それが今年の初めから受信料値下げはNHKへの政治の介入であると批判する記事を掲載し始めています。これが今回総務省に呼び出された原因となった2021年1月28日の論説です。題名は「NHK値下げ 政治の影に疑念が残る」となっています。冒頭を引用すると

==NHKが唱える「自主自律」とはいったい何なのか。こんな迷走ぶりで、市民の真の理解を得られると考えているのか。疑問が次々とわいてくる。

執行部がまとめた向こう3年間の経営計画が、13日のNHK経営委員会で了承された。衛星放送やラジオのチャンネル数の削減など、昨年8月の素案にあった業務のスリム化に加えて、23年度に受信料を引き下げることを急きょ打ち出した。

東京・渋谷の放送センターの建て替え計画の見直しや、剰余金の取り崩しなどで700億円を捻出して充てるという。 剰余金は今年度末で1450億円にのぼる見込みだ。非常時への備えを考えても多すぎるのは明らかで、視聴者に還元する方向性自体は妥当といえる。

それでも釈然としないのは、決定に至る過程に政治の圧力を明らかに感じるからだ。視聴者・国民よりも政権の顔色をうかがうことにきゅうきゅうとするNHKの体質も垣間見える。==*下線部「市民の」は「私の」でしょう?市民は受信料値下げを望んでいる。

これを読むと値下げは妥当だが、その決定は政治の圧力によるものだからけしからん、という主張のように読めます。しかし、NHKは政治の圧力が無ければ1割の値下げも行わなかったわけで、この圧力は本来政治に期待される圧力です。この論説は政治の圧力を批判しているように装っていますが、真の狙いは受信料値下げを阻止または牽制することです。

これは朝日新聞の経営悪化がもたらしたものであり、餓鬼道に落ちた餓鬼の主張です。朝日新聞は餓鬼新聞に社名を変更した方がよいと思います。4月16日の報道によるとNHK受信料値下げなどを内容とする放送法改正案は取り下げられることになったということです。これで朝日新聞の主張は実現したことになります。朝日新聞は自社の主張が通って満足でしょうが、購読部数は大幅に減少することになります。