移住者には同化よりも異化を期待しよう

地方では中心都市以外は高齢化や人口減少が激しく、そのため東京や大阪などの大都市から移住者を増やす活動を盛んに行っています。東京や大阪などの都会でもコロナで都市生活に不安を持つ人が増えてきて、移住する人も増えて来ているようです。

実はコロナがなくても都会から地方への移住は増えてきたと思います。それは地方での生活が都会での生活よりも豊かであることが分かってきたからです。都会での収入は確かに地方より多いけれど、その分生活コストも高くなっています。それに長い通勤時間や満員電車のストレスも大違いです。これらを考えると都会の生活で得をする人は全体の40%もあればよい方であり、残りの60%の人は地方の方が良い生活ができる可能性が高いと思われます。だからこれからも都会から地方への移住者は増えて行きます。

同時にメーカーの中には本社を中核工場がある地方に移す企業が増えてきます。現在日本のメーカーを見ると、トヨタや日本電産、京セラ、ファナックなど地方に本社を置く企業が元気です。もしこれらの企業が東京に本社を移していたら、今の盛況はなかったと思われます。メーカーが本社を東京に移すと東京の街にふさわしい行動を採ろうとして、メーカーの地道な仕事のやり方から乖離してしまうようです。その結果良い製品が作れなくなって衰退して行きます。今話題の東芝や日本製鉄、三菱重工、三井造船などは東京に本社があるために官僚化し、衰退に身を任せるしかなくなっています。それに対して地方に本社があれば、東京の華やかに惑わされることがなく、地道な生産活動に励むことになります。これをやっていれば一旦一流になったメーカーがそう衰退することはありません。京都や愛知は良いメーカーが集まっており、それがお互いに良い手本となっています。銀行や商社、放送局、広告会社などサービス業が華やかを競う東京は、地道なメーカーには向かないのです。これに気付くメーカーが増えており、メーカー本社の地方移転が本格化してきます。そうなれば、地方で職場が増え移住環境が整うことになります。

問題は移住後の生活スタイルです。都会では隣に住んでいる人も知らないくらい相互不干渉の個人主義が徹底しています。一方田舎では知らない人はいない状態で、お互いに助け合わなければならないという意識が強く、多くの場面で共同行動が求められます。そのために自治会活動が活発であり、本来任意参加のはずなのに実質的には強制参加の状態です。その結果自治会主催の祭りや清掃会などの行事が多くなり、男性は飲み会、女性は食事作りに何回となく駆り出されます。これは特に都会育ちの女性には苦痛となるようです。それで参加しなくなると今度は陰口を叩かれ、村八分に会います。こうなると田舎生活が苦痛になります。こうやって田舎は都会からの移住者を強制的に田舎に同化させています。

今後はこれが田舎への移住の障害になり、また移住者が田舎を変える妨げになります。都会からの移住者は、都会の会社勤めや生活で習得した特殊技術やノウハウを持っており、それは田舎の発展や変化に役立つものです。従ってそれを使わない手はなく、彼らが活動しやすい環境を用意する必要があります。そのためには、田舎の風習に従うことを強制してはなりません。

小笠原諸島の父島も移住者が増えていて、テレビ番組で紹介されましたが、父島の良さについてある移住者は、「移住者が多く、ここの古くからの住民に合わせることを求められないところ」だと言っていました。これは多くの移住者が望んでいることだと思います。

移住者を受け入れる地方は、移住者には地元に同化することを求めず、地元に変化を起こしてくれること、即ち異化を期待した方が良いと思われます。移住者が地元に同化したら、元の木阿弥です。