日本の安全保障は輸出倍増政策でしか得られない

米国のバイデン政権が中国を最大のライバルと名指し、中国に対抗するために欧州やアジアでの同盟強化を打ち出しました。日本も米国・オーストラリア・インドとの同盟関係を強化してきましたが、これからは実体を伴った防衛力の強化が求められそうです。日本が米国との同盟強化の立場を鮮明にしたことから、中国は今後尖閣諸島に対して圧力を強めてくると予想されます。海警による尖閣諸島領海への侵入は日常茶飯事になるでしょうし、領海内で漁をする日本漁船を拿捕してくると予想されます。また中国漁船が大挙して尖閣諸島領海に出漁し、その保護のため海警が領海内に留まり、海上保安庁の巡視船と対峙する状況が生まれると予想されます。そうなると当然両国の海軍艦艇が近海で待機し、何かをきっかけに砲撃しあう状況が発生することも考えられます。その際には沖縄に駐留する米軍も存在を誇示する絶好の機会と考え出撃し、尖閣周辺は緊迫した事態になると予想されます

ここで日本はどこまで中国の圧迫に耐えられるかですが、防衛費で見ると中国約28兆円、日本約5兆円と5倍以上の開きがあります。中国は原子爆弾や空母、原子力潜水艦、長距離ミサイル、爆撃機と米ロ並みの戦力を誇ります。それに対して日本は平和憲法ボケして、少し強力な海上戦力と沿岸に押し寄せた敵に対するミサイルしか持っていません。これでは本当の戦争になったら勝ち目がなく、尖閣の実効支配が中国に移る形で収束しそうです。

それならそれで構わないと言う考え方もあるのですが、その次が問題となります。尖閣諸島を支配した中国が次の狙うのは沖縄です。それも武力で侵略するのではなく、沖縄の独立を働きかけてきます。沖縄は1879年に日本に併合されるまで琉球王国という独立国家でした。1854年には米国、1855年にはフランスと修好通商条約を結んでいますから、国際的にも独立国家として承認されていたことになります。また琉球国王は中国皇帝から承認を受けて琉球国王に就任する形をとっており、言うなれば中国は琉球王国の宗主国でした。従って中国にこの形を復活したいという野望が生まれても不思議ではありません。その前に中国は台湾の実行支配を試み、この際にはこれに反対する米国・日本・オーストラリアおよび欧米同盟国の間で第三次世界大戦並みの緊張状態が生じると予想されます。こう考えると日本は今後実践的な防衛力整備が必要であり、真剣に安全保障を考える必要があります。

安全保障は結局望防衛予算の規模で決まります。中国軍より自衛隊の防衛装備が近代的と言われることがありますが、中国の宇宙技術などを見るとそんなことはないと思われます。やはり中国軍の破壊力のある武器を強力であり、それは巨大な防衛予算の賜物です。一方日本の防衛予算5兆円では防衛装備の現状維持が精一杯であり、実際の戦闘には使えない机上の空論装備になっている可能性があります。これはバブル崩壊後漂流してきた日本を見れば、十分ありうることです。

やはり防衛力は防衛予算で決まり、防衛予算は国のGDP規模で決まることを認識する必要があります。ここで2019年度のGDPを見てみると、中国14兆ドルに対し、日本5兆ドルとなっています。約3倍中国が大きい勘定です。それに対して防衛予算は5倍以上の開きがありますから、中国が多くの予算を防衛費に割いていることになります。原子爆弾や大陸間弾道ミサイル、空母などを保有するとこれくらいの規模になると考えられます。

日本がこれから中国の脅威に対して安全保障を確保するためには、防衛予算を増やす必要がありますが、そのためにはGDPを増やす必要があります。日本の年間予算は約100兆円ですが、その内税中は約60兆円で、残り40%は国債を充てています(コロナの影響を除く通常ベース)。国債の発行残高は約1000兆円とGDPの約2倍に達しており、国際的には返済不能の国家財政破綻状態と認定されてもおかしくありません。そうならないで予算規模を拡大するためには、GDPを拡大するしかありません。日本の財政がこれだけ悪化したのは、バブル崩壊以降輸出が拡大していないためです。日本の輸出総額は年間約78兆円であり、最盛期(2007年83兆円)より5兆円減少しています。その結果GDPに占める輸出の割合は約16%に低下しています。これを韓国(43%)やドイツ(46%)並みに増やせば、GDP1000兆円が可能であり(輸出額増大+外貨流入に伴う国内景気押上げ)、予算規模は200兆円(GDPの20%)となります。これで防衛費も倍増できます。これでも防衛費は中国の3分の1以下でしょうが、これがなければもっと開きます。

このように日本の安全保障確保の肝は輸出倍増であり、これは財政再建の唯一の道でもあります。日本の政策をこれに集中する必要があります。