数学履修歴のない文系はサービス産業にしか行けなくなる
早稲田大学(早大)が今年の入試から数学を必須科目としたことが最近になって話題となっています。必須科目としたと言っても大学入試共通テストであり、その後の大学独自試験の科目とはなっていませんし、数学でも数学1・Aのみのようですから、国立文系大学出身者からすると、なんでそんなに話題になるのと言う感じだと思います。
むしろ早大の入試改革で注目すべきは、大学独自試験で英語と日本語の長文読解試験を課し、定員を450人から300人に減らしたことにあります。大学入学共通テストで文理基礎知識を見て、その後の大学独自試験で応用力を見ています。これは基礎知識を総動員して問題を解析し、解決策を見いだす能力を見ており、社会で求められる能力です。その中からわずか300人を選抜するのですから、合格者は東大の法学部や経済学部と変わらないレベルになると思われます。こんなに人数を少なくして大学経営として成り立つのか心配になりますが、いずれ社会的評価が高まったらそれにふさわしい学費に値上げしてくると思われます。
この早大の取り組みに対しては、社会人から支持する声が多いようです。特に私立文系卒業者は、企業に就職して数字と格闘する場面が多く、数学を学んでおくべきだったという意識が強いようです。企業では、会計や統計には数学の知識が欠かせませんし、ITも数学の素養が不可欠です。またその他の社会生活でも、重要な決断が求められる場面では数字がものを言います。このように社会人になると数学は日本語や英語と並ぶ重要な学問だったことを痛感します。そのため本件については、社会人の支持が高くなっています。
それでもこれが私大全体に広がるかとなると否定的予想が多いようです。現在高校生の数が減少しており、学生を確保できず経営的に苦しくなる私大が増えています。私大の多くが文系であり、入試に数学を必須化したら受験する学生が減ると予想されることから、多くの大学は経営上数学を入試に加えることはできないと考えられます。
しかし、私立大学でも難関と言われ、大企業に多数の学生が就職する大学は、数学を入試科目に加え、大学のカリキュラムでも数学系科目を多くするようになると予想されます。
そうでないと大企業の欲しい人材を養成できず、その結果大学が企業から、また学生から人気がなくなってしまいます。そして文系の大学の履修科目でも数学系科目が3分の1くらいを占めてくると思われます。こうなると国立文系と差が少なくなりますが、国立文系は数学の他生物や化学、工学などの理系科目をまんべんなく履修するリベラルアーツ型教育に移行し、私立文系はあくまで企業が必要とする数学系科目を加えるのみになると考えられます。
そして数学系科目の履修歴が就職を左右するようになり、経営幹部を目指すなら数学系科目の履修は必須と考えられるようになります。大学で数学系科目を学ばない学生は、殆どがサービス産業に行くことになります。
早大の入試への数学の採用は、こんな時代の幕開けを予想させます。