憲法改正は安倍ポエムの集大成

安倍元首相が憲法改正に向けて積極的に動き出しています。4月20には自民党の憲法改正推進本部の最高顧問に就任すると共に、憲法改正を推進する保守系グループや議員連盟の役員にも就任しています。5月3日にはBSフジのプライムニュースに出演し、菅首相の続投を支持する発言をしていますが、これも同日菅首相が憲法改正の集会にビデオメッセージを寄せ、憲法改正に積極的な姿勢を見せたためと思われます。

安倍首相の改憲趣旨は、自民党が掲げる「自衛隊明記」「緊急事態条項創設」「参院選の合区解消」「教育無償化」の「改憲4項目」に反映されています。どれも緊急性はなく、この重大なコロナ下で言い出すものではありません。例えば、自衛隊を憲法に明記することについては、既に実体的に承認されており、単なる手続きに過ぎません。また明記することによって軍事力拡大に向かい、また侵略戦争に踏み出す可能性が出てきます。現在のままの方が国民の意識に適うと考えられます。参議院の合区の解消については、道州制の導入のような行政区画の変更が根本的解決に繋がりますし、法律で対応可能です。教育無償化も同じです。そういう訳で、今回のコロナ事態により「緊急事態条項創設」が憲法改正を急ぐ理由の中心となって来ています。実際自民党の下村政調会長は、5月3日憲法改憲派の集会に出席し、コロナ禍を受け感染症拡大を緊急事態条項の中に含めるべきだと主張したうえで「今回のコロナを、ピンチをチャンスとして捉えるべきだ」と語っています。確かに現在の憲法は緊急事態を想定しておらず、欧米のような国民統制は取りづらくなっています。しかしこれは取れないのではなく、政府関係者の状況判断が甘くそれだけの覚悟のある判断ができないだけです。日本の場合緊急事態条項の創設は、戦時中の官憲による国民弾圧に繋がる可能性が高く、憲法でこれを認めることは非常に危険です。日本は過去にアジアの国々を侵略した歴史がありますので、状況によってはまたやりかねません。そうならないためには、憲法で歯止めを掛けておく必要があり、緊急事態条項は設けないというのが一番だと思われます。

このように今憲法改正の必要は全くないにも拘わらず、安倍元首相が憲法改正の動きを活発化させている理由は何でしょうか?安倍氏が首相を辞め暇だということが一番の理由です。それに安倍元首相と言えばポエムであり、安倍元首相は憲法改正を安倍ポエムの集大成にしたいようです。安倍首相は最初に首相に就任した際に「美しい日本」という抽象的なスローガンを掲げてポエム頭の一端を示していましたが、2019年9月5日にロシア極東ウラジオストクで開催された国際会議「東方経済フォーラム」では、「ウラジミール。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジミール、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか」などと演説し、安倍ポエムを披露しました。これに対してプーチン大統領は「(北方領土は)スターリンが手に入れた。議論は終わりだ」と安倍ポエムを嘲笑いました。このやり取りに対しSNSでは「ポエム?」「自己陶酔の世界」「半笑いのプーチン」といったコメントで溢れました。これを受けてN国党の丸山穂高衆院議員はツイッターで安倍首相のことを「お人好しというレベルを遥かに超えてる」と述べています。また、先ほど取り上げたフジテレビのプライムニュースで、東京オリンピックの開催について問われた安倍首相は、「菅義偉首相や東京都の小池百合子知事を含め、オールジャパンで対応すれば何とか開催できると思う」と述べて、ポエム頭の健在を示しました。
これらから安倍首相の頭は抽象的なことしか考えられず、現実と遊離していることが分かります。憲法の規定は抽象的であり、憲法改正問題は安倍首相のポエム頭には合うようです。憲法は国民の具体的生活からの要望を集大成したものであり、ポエムではありません。憲法改正問題は、安倍元首相が扱う問題ではないと思われます。