日本、労働生産性でも韓国に抜かれた!
日本生産性本部が調査している労働生産性のデータによると、日本の2019年の就業者1人当たりの労働生産性(実質GDP÷就業者数)は8万1,183ドルで、OECD(経済協力開発機構)加盟37カ国中26位だそうです。日本はこれまで6年間ほど21位だったようですが、19年は大きく順位を下げてしまったとのことです。これに対し、韓国は同8万2,252ドルで24位と日本を1.3%上回り、初めて労働生産性で日本を逆転したということです。これは就業者(労働者)1人当たりの稼ぎ高は韓国の方が多くなったことを意味し、端的に言うと韓国の労働者家庭が日本の労働者家庭より豊かになったということです。
韓国と日本は経済構造や社会構造が似ており、比較しやすいようです。人口は2010~20年平均で日本は年0.2%の減少で、韓国は0.3%の増加。一方、実質GDPの伸び率は、2015~20年平均で日本がゼロ成長に対して、韓国が2.1%の成長していますので、これが労働生産性の逆転となった原因のようです。2020年のGDPはコロナの影響で日本は実質4.8%下落しており、コロナの影響から早く脱し1.0%の落ち込みに済んだ韓国との労働生産性の差が更に広がったと思われます。IMFは、2020~26年の実質GDPについて日本は8.9%上昇、韓国は17.0%の上昇と想定しているようですが、もっと大きな差がでると思われます。また韓国だけでなく、海外の主要国との生産性格差も広がっており、このままでは日本は経済的には先進国から脱落し中流国の仲間入りをしそうです。
韓国との関係で言うと、IMFのレポートでは2019年の1人当たりGDPが日本41,501ドルに対し、韓国42,135ドルと逆転していましたから、労働生産性の逆転も当然のことと言えます。昨年の韓国紙の報道によると、韓国大企業の大学卒1年目の平均年収は約410万円となっていますし、今年の報道ではサムスン電子の約11万人の従業員の平均年収は約1,220万円となっていますので、経済的には日本は韓国に相当差を付けられている状態と言えます。これが日本人に認識されていないのは、韓国はかって日本が植民地にしていた国であり、日本より劣っているという思いこみがあるためだと思われます。最近韓国では従軍慰安婦や徴用工問題を口実に日本叩きが活発化していますが、経済的に日本を抜いたことを実感し、自信を持った韓国国民が昔の植民地だった屈辱を晴らそうとしているとも考えられます。だとすれば韓国の日本に対する経済的優位性が高まれば高まるほどこの動きは激しくなると考えられます。
このまま韓国と日本との経済的格差が開く状況を座視するのは悔しい限りです。こういう状態になった原因は、日本がバブル崩壊の処理に手間取っている間に、韓国が日本の輸出品を次々に奪ったからです。鉄鋼、造船、テレビ、液晶、半導体とかっては日本が輸出トップだったものが韓国に奪われました。日本の輸出額は約80兆円であり、ここ30年近く変わっていません。一方韓国は今年60兆円を超え、5年以内に日本を抜くという予想もあります。韓国の人口は約5,170万人と日本の半分以下であり、この国が日本の輸出総額を抜くと言うのですから、国民1人当たりの輸出額でみれば韓国は日本の2倍以上となります。韓国はGDPに占める輸出の割合が42%程度と日本の16%程度の3倍近くあることが、韓国が日本を経済的に抜いた原因です。輸出代金で受け取る外貨がウォンに交換され、国内のウォン流通量が増加しますから、韓国国内の景気がよくなり、国民の経済的状況が良くなるのは当然のことです。一方日本は有力政治が内需中心、それも人口減少が進む地方を中心とした経済振興を唱えていますので、うまく行くはずがありません。その結果経済活動は活発化せず国内で流通する円が徐々に減少し、景気が悪化することになります。これを防ぐために安倍政権が採った政策が日銀による国債買入です。これによって国内に出回る円の量を増やし、インフレ状態を作り出そうとしたのです。しかし単に不動産価格や株価、物価を挙げて好景気状態を作り上げようとしたものであり、一種のミニバブル状態でした。それが2019年10月からの消費税2%引上げで元の状態に戻りました。
日本と韓国のどちらが良い政策かは誰でもわかります。韓国の輸出を増やして国内景気を良くすると言う政策は、バブル崩壊前の日本が採っていた政策です。日本も輸出で得た外貨が円に交換されて円の流通量が増加し、不動産バブルを生みました。韓国がまさにその状況にあります。歴史は繰り返す、です。日本は賃金でも韓国より安い状態ですから、輸出を韓国から取り返すことができるはずです。そしてこれをしない限り、日本は韓国を抜き返すことはできません。
日本は今後経済産業省を中心に輸出品を韓国から取り返す政策に注力する必要があります。