生活保護費こそ日銀買入国債の使いどころ
コロナ感染拡大で飲食業や旅行・旅館・ホテル業などで廃業や失業が増加しています。2020年平均の完全失業者は191万人となっており、2019年と比べて29万人増加しています。この他パート・アルバイトなどの非正規雇用者で実質失業状態にある者が146万人(2021年2月末)に上るということですから、合計337万人が失業状態にあることになります。2020年度の労働力人口は6,868万人にとなっているので、2020年度の完全失業率(完全失業者÷労働力人口×100)は2.8%となります。これはコロナ禍で失業者が増えた中で少なすぎるように感じます。非正規失業者を入れると失業率は4.9%となるので、これが実態に近いように思われます。
今年もコロナの影響は続きそうなので、実質失業率は5%と超えてくと考えられます。その中ではセーフティネットが重要となります。2020年12月末の生活保護受給者数は約205万人となっており、非正規を含めた失業者337万人との差が132万人あります。これには失業保険金を受給中の人や貯蓄がある人がいるためと考えられますが、中には生活保護受給窓口の敷居の高さや後ろめたさのため、申請を躊躇っている人がいると考えられます。そしてその中から自殺者や行き倒れや餓死する人が出てきます。
このような人を出す国家は最低の国家です。人が国家に属するのは生きるためであり、国家は生存を保障する必要があります。憲法で健康で文化的な生活の保障は、どこの国家にも共通する最低限の保障です。そのためには、生活保護申請の間口はできるだけ広く取り、敷居も低くする必要があります。
しかし以前どこかの自治体で予算がないからと申請に来てもできるだけ追い返すようにとの指示が出ていたという報道があり、生活保護が必要な人が申請するのを躊躇わせる原因となっています。地方自治体は予算がないとお金は出せないのは分かりますが、生活保護費は先ず優先的に確保する必要があります。自治体に予算が足りなかったら国が追加で支給する必要があります。
その原資となるのが日銀買入国債です。日銀は財務省が55%出資しており、実質的に財務省の支配下にあります。日銀買入国債は日銀が債権者となりますが、日銀は国から国債を買い入れるための資金は日銀券を発行して確保でき(現在は銀行が預け入れている当座預金で購入している)、銀行などの投資家が返済が必要な資金で国債を購入するのとは全く異なります。即ち、日銀の国債買入の資金は返済の必要がないものであり(現在日銀が国債の購入に充てている銀行からの当座預金は法律で一定割合預けることが義務付けられている法定預金であり、実質的に返済を求められることはない)、国債が償還されなくても日銀が被る損害は何もありません。これから日銀保有の国債は、財務省に代わって償還したものであり、財務省に代わって保有している状態です。従って今の日銀保有国債約545兆円(2020年12月末)は、いずれ財務省により償却処理されます(帳簿から消える)。これにより損害を被る関係者は誰もおらず、国内的には何ら問題ありません(ただし、国際的には一時的に混乱が生じる)。従って、日銀買入国債は、国民が国家に集った最大の目的である生存の保障に使うのが最良の使い方と言うことになります。だから、生活保護費の申請は幅広く認め、もし受給後に不正が判明したら、刑事罰を課すことで対処すべきです。