豊田社長の報酬4.4億円、これは社員の給料を上げないため!

トヨタの豊田社長の昨年の報酬が4億4,200万円だったと報道され、ネット上で話題になっています。ネットの声では圧倒的に「安い!」という声が多いようです。当たり前です。トヨタの昨年の業績は、売上高29兆9,299億円、営業利益2兆4,428億円であり、日本一の売上高と利益を誇っています。海外の経営者の報酬は数10億円が普通ですし、日本でもソニーの吉田社長の報酬は12億円を超えています(ソニーの昨季の業績は売上高8兆9,936億円、営業利益9,718億円)。豊田社長の報酬は上場企業の社長(取締役)報酬の中では10位くらいになります。これは誰でも安いと思います。

これをもってネットでは、

「世界基準で比べれば、もっと貰って良いはず。でも、豊田社長は貰わない。そこが、世界のTOYOTAの社長。従業員とその家族を守り、自社のみならず、日本の自動車業界全体を考える姿勢に頭が下がります」

「創業家でこれだけ評判の良い人も珍しいのではないかと思います。各署への影響を考えると報酬はもっと多くて良いと思いますが、ご本人の意思もあるでしょうから周りがとやかくいうことでもないと思います」

「自動車業界全体の事を考えてくださってるし、日本の事も考えてくださってる。もっと貰っても良いんだけど、そこもしっかり考えておられるのだろう。世界に誇れる経営者だと思う」

「資産なんぞ自社株どころか会社そのものが資産ですが、それをどう活用して日本、世界に貢献できるかを毎日考えては試行している。そんな人でしょう」

「もっと貰ってもいいと思います。でもそれを良しとしない潔さに好感持てます」

など評価する声が多いようです。

これらの声は会社員が多いようですが、これは間違った捉え方です。豊田社長の給料が会社の業績と比べて圧倒的に安いのは事実ですが、それをもって評価してはいけません。この結果他の役員報酬を上げられなくなり、一般社員の給料も上がらなくなるのです。豊田社長が社長報酬を抑えているのは、一般社員の給料を抑えるためです。豊田社長は創業家出身ですから、トヨタは家業であり、永続が一番重要です。そのためには社外流出をできるだけ小さくして資金を社内にため込むのが一番です。そのために自分の報酬を抑えているのです。豊田社長の場合、トヨタの株式をたくさん持っており多額の配当収入もありますから、報酬を多くする必要はありません。6月25日の報道によると豊田社長個人で子会社に私財50億円を出資したようですので、私財は数百億円~数千億円に上ると思われます。トヨタという会社自体が私財とも言えますから、自分の報酬を低く抑えることによって会社の一般社員の給料を低く抑え、トヨタと言う私財を増やしているのです。このカラクリに気付く必要があります。

韓国でトヨタの位置にいるサムスン電子(売上高22兆4,500億円、営業利益3兆4,100億円)の従業員1人当たりの収入は約1,220万円となっています。一方トヨタは860万円であり、約3分の2のレベルに留まっています。サムスン電子は攻めの経営で有名であり、仕事は欧米流の実績主義で、稼ぎに応じた報酬を与えていることが分かります。これに近い報酬体系を採っているのがソニーで、そのため社長の報酬も高くなっています。どちらが良いかと言えば、従業員にとってはサムスン電子やソニーが良いと思います。何故なら会社には好不況があり、好況のときに大きな報酬を貰わないと、一生貰うときがないからです。今後は終身雇用制が壊れることが予想されることから、業績に応じた報酬であることが重要になってきます。トヨタもフランス人のルロア副社長には10億円以上の報酬を払って来ており、米国や欧州の幹部社員の報酬は欧米並みとなっていると思われます。ということは、日本人の幹部だけが不当に低い報酬になっているということです。これは余りにも情けないシステムと言わざるを得ません。

トヨタは豊田家の家業として今後100年、200年続く前提で報酬体系(日本人だけ低い)を構築していると考えられますが、その間一時的にトヨタで働くに過ぎない従業員にとっては良い報酬体系ではないと思います。またトヨタは東南アジアで実績主義を取る韓国現代に侵食されており(インド、ベトナムなど)、今の報酬体系では今後トップから陥落する日も近いと考えられます。