日本の財政再建の中心官庁は経済産業省
日本は国債発行残高が1,000兆円を突破し、実質的に財政破綻状態にあります。財政破綻状態というのは、1,000兆円の国債残高を国の収入で償還するのは不可能だということです。家庭で言えば家のローン残高が一生かかっても返済できない状態です。家のローン残高の場合、まだ家を手放すことで返済に代えることが出来ますが、国家財政の場合、国家を手放して償還にかえることはできません。ということは、ある時点の国債の所有者が償還を受けられなくなるということです。しかし国債の所有者も出来るだけ回収しようとしますから、国に増税を求めることになり、家計が圧迫されることになります。だから財政破綻状態はいずれどこかの時点で国民を苦しめることとなります。
そのためコロナ収束後は財政再建が重要な国家テーマとなります。安倍首相は国債を日銀に購入させることによって市中の資金をダブつかせ、金利低下効果によって経済を活発化しようとしましたが、これによって活発化したのは株式市場と不動産市場だけでした。産業のエンジンである製造業が活性化しなかったのです。辺り前です。国内は高齢化か進み、人口も減少に転じたため、国内市場中心の日本のメーカーは売れるものがありません。海外を見れば中国や東南アジアの経済が拡大を続けており、国内メーカーはここに輸出して売上を伸ばすしかありませんでした。しかし安倍政権は、不動産市場と株式市場の好調さと海外からの観光客の増加に満足し、製造業の輸出に力を入れなかったのです。その結果2019年10月からの消費税引上げによって見かけの好景気は一挙に剥げ落ちました。2020年に入るとこれにコロナが輪を掛けます。これで昨年のGDPは4.6%の落ち込みとなりました。
その結果今年の予算107兆円は税収57兆円、国債43兆円となり、国の予算の4割以上が償還不可能な国債で賄われるという事態になっています。
国債は現在半分以上(今年5月末で545兆円)を日銀が保有しており、償還の問題は生じません(なぜならば日銀の55%の出資者は財務省であり、日銀=財務省=国だから債権債務は混同で消滅する)。
それでも将来的には税収で国の予算が賄えるようにしていく必要があります。これがコロナ収束後に必要なる財政再建です。
そして日本の財政再建には1つの方法しか残されていません。それは輸出を今の3倍に増やすことです。最近の日本のGDPは約530兆円です。そして税収が約60兆円ですから、GDPの約1割が税収となることになります。これに対して最近の年間予算は約100兆円ですから、今の税負担率を前提するとGDPが1,000兆円になれば、税収が100兆円となり、歳入は全額税収で賄えることになります。GDPを1,000兆円にするには、輸出を今の3倍に伸ばすしか方法はありません。今の輸出は年間約86兆円で、バブル崩壊後殆ど伸びていません。GDPに占める割は約16%です。一方海外を見ると財政が健全なドイツはこれが46%、韓国は42%となっています。バブル崩壊後日本の輸出割合が減り続けるのと真逆に韓国は輸出を伸ばし続けました。それは日本の輸出品目を次々に奪って行ったからです。造船、鉄鋼、家電、半導体など今韓国の輸出の中心を占めるのはかって日本が輸出トップにいた製品です。この結果、韓国では輸出代金として受け取った外貨がウォンに交換され、国内にはウォンが溢れて一種の輸出バブルになっています。1980年代に日本でバブルが生まれた背景と同じです。これに対して輸出を韓国に奪われた日本は、輸出代金として受け取る外貨の交換に伴う円の増加に代えて、国債を日銀が買入れることによって、円の国内流通量を増やしています。どちらが健全か明らかだと思います。
これを考えると今後日本の財政を健全化するには、輸出の割合をGDP比でドイツ並みに高めればよいことになります。今の3倍であり、輸出総額は約260兆円になります。これでGDPは約800兆円となりますが、製造業が好況になり雇用が増えること、輸出代金が円に交換され国内に溢れることにより好景気が生み出され、GDPは1,000兆円近くに達すると考えられます。
実はこの考え方は、菅首相の経済ブレーンと言われ、成長戦略会議委員を務める元ゴールドマンサックス証券経済調査部長のデービット・アトキンソン氏が著書で主張している内容です。内容的には間違っておらず、これを実行するしかありません。これを国の政策として採用する場合、財政再建の主体は財務省ではなく経済産業となります。財務省、会社で言うなら財務部であり、財務部が会社再建の主体でないことは、会社では常識です。