悪辣auからプラチナバンドを取り上げるべき

SIMロックの解除方法を案内したKDDI(以下au)のウェブページが、長らく検索しても表示されない状態となっており、調べたら同ページに検索しても表示されないようにするnoindexというタグが埋め込まれていたということです。auは、自社ウェブサイトの利用者向けに「SIMロック解除のお手続き」と題したページを公開しているのですが、ウェブページを表示させるプログラムの中にnoindexという言葉を埋め込み、このページが表示されないようにしていたのです。この目的はSIMロック解除をさせないためであることは明確です。これについてauはこの事実を認めながら、noindexを埋め込んだのは一時的に公開したページで、SIMロック解除手続きのページを表示させないためではなかったと言っているということです。

このauの言い分は全く信用できません。何故ならば、auは今年2月、携帯電話の解約手続きページにも同じタグを埋め込み、解約ページが表示されないようにしていたことが分かり、総務省の指導によりこのタグを削除しています。普通の会社なら同じことをしているページについても見直しますから、その後このようなことは起きません。auの場合、全く反省がなく、「何が悪い?」というのが本心だと言うことになります。

携帯電話3社(ドコモ、au、ソフトバンク)の2021年度決算は、3社合計で売上高約15兆円、営業利益約3兆円、営業利益率約20%と、日本の産業の中でもトップレベルの利益を誇ります。これがグーグルやマイクロソフトなど自社開発の技術やサービスに基づくものなら理解できますが、携帯電話事業は、国民の電波を使った生活インフラ事業であり、電気・ガス・水道と並ぶ公益事業です。これはかって日本電信電話公社が担っていたことからも分かります。そして他の公益事業会社は、公益事業の本旨から低い利益に甘んじています。例えば電力9社の場合、総売上高約20兆円に対し、営業利益は約1兆円、営業利益率約5%に留まります。電力9社の営業利益総額はau1社の営業利益と同じです。如何にauが公益事業の本旨に反し、家計を搾取しているかが分かると思います。

auは、菅政権の値下げ要請に抗いきれず昨年12月に値下げプランを発表しましたが、20Gまで2,480円という値段がその前に発表したNTTの2,980円を500円も下回る点をアピールしました。しかしこれはNTTの料金には5分の通話無料分が含まれているのに対し、auの場合これが含まれていないために生じた料金差でした。このようにauはユーザーを誤解させるような販促策を平気でします。auのこの料金プラン(povo)はインターネット専用ですが、これをショップへの誘引策に使いました。そしてショップに対しては、povoで誘い込んでpovo以外の高額な契約を結ぶよう指示していたという報道です。自らpovoフック(引っ掛け)という言葉を使っていたということですから、悪意は明確です。

auの悪辣さはこれに留まりません。携帯電話3社はこれまで解約はショップでしかできないこととしていましたが、昨年から続くコロナ蔓延で外出自粛を求められる中、NTTは今年3月ネットによる解約を認めました。当然です。解約をショップでしか認めないのは解約防止のためであり、本来もっと早く是正されるべきでした。NTTがネット解約を認めたのもそういう動きになることを先取りしたものでした。その後総務省もネット解約できる方向に動いており、ソフトバンクは協力的です。一方auは、解約をショップに限っているのは、誤って解約するのを防ぐためであり、止めることは考えていないと言っています。詭弁であり、悪辣な会社の体質を良く表しています。

このように携帯電話を家計搾取の手段化した携帯電話3社の中でもauの悪辣さは際立っています。auは京セラ創業者の稲盛和夫氏が創設に加わり、稲盛イズムが受け継がれている会社ですが、稲盛イズムは悪辣な手段を使って家計から搾取することを教義とするものではないはずです。auはどこかでおかしな方向に行ったようです。

携帯電話業界は楽天の参入によりこれから競争が激化します。現在のところ楽天の電波カバー率が低いことから、それ程の影響は出ていないようですが、楽天の電波カバー率が高まるにつれて携帯電話3社から楽天への顧客流出が大きくなることが予想されます。その中でソフトバンクは、ヤフーのポータルサイト、オークションやショッピング、更にラインの会員を基盤に、自社ユーザーを増やして行くと考えられます。大手3社の中でこのような会員基盤が脆弱なドコモとauから楽天とソフトバンクにユーザーが流れると予想されます。このためauとしては、ユーザー流出を食い止めるため上記のような悪辣な方法を見境もなく繰り出していると考えられます。

総務省は今後大手3社で独占しているプラチナバンドを再配分できるようにするということですので、先ず悪辣な商法を止めないauからプラチナバンドを取り上げるべきだと思います。