コロナで分かった民間病院は知人友人優先
コロナ蔓延で入院病床が足りないと何度も緊急事態宣言が出され、日本の医療システムの問題点が浮き彫りになっています。人口1,000人当たりの病床数は日本が13.0床で、主要7カ国では、ドイツ8.0床、フランス5.9床、イタリア3.1床、米国2.9床、英国2.5床などに比べて圧倒的に多くなっています(OECDデータ)。なのに入院できる病床がないということは、病院の多くを占める民間病院の病床が使えないということを意味しています。厚生労働省が感染症患者は保健所を通し公立病院に収容する政策を採ってきたため、公立病院に感染者用の入院ベッドが少なくなると緊急事態宣言となるようです。民間病院はコロナで患者が減少し、その分入院ベッドに空きが多いにも関わらず、です。民間病院としては、医師が感染症治療の経験がないし、入院患者から医師や看護師が感染すると経営問題になりますから、入院を受け入れたくないこととは理解できます。しかし初めて流行した感染症に対して治療経験がないのは公立病院の医師も同じです。公立病院の医師たちは今までに学んだ医療技術を総動員して対処しているに過ぎません。民間病院の団体である日本医師会は会長が記者会見で医療崩壊という言葉を多用しましたが、国民には実感が全く伝わりませんでした。話す医師会長の表情や態度にそんな危機感は全く感じられませんでしたし、医師会スタッフが書いたペーパーを読んでいるだけという雰囲気だったからです。まるで安全な場所にいて、空襲警報を出しているようでした。それもそのはずです。日本医師会は民間病院および個人病院経営者の組織であり、公立病院とは無関係だったのです。ならば黙っているべきでした。そこで日本医師会について悪い印象を持った人も多いと思います。ワクチン接種については、日本医師会加盟の民間病院および個人病院も医師を出すなど協力しているようですが、ここでも民間病院の本質が露わになっています。それは医療従事者用に割り当てられたワクチンを病院に資金援助をしている人や医師の知人に接種する事例が続出しています。たぶん最も行われたのは医師の家族への接種だと思われます。役得といえばそれまでですが、これは今の医療政策の重大な欠陥を暗示しています。それは将来感染症のような多くの国民が治療やワクチンの接種を必要とする事態になったとき、民間病院では医師の家族や知人、友人を中心に治療やワクチン接種が行われる可能性が高いということです。公立病院のように緊急性に応じて平等な基準で取り扱われることは期待できないと思われます。民間病院とはそういうものということになります。従って、医療はあくまで公立病院を中心として、民間病院はその補助と位置付ける必要があります。