大谷選手の頭の中には曼荼羅チャートがある
7月14日、米国MLBオールスターゲームは大谷選手のワンマンショーでした。米国でのテレビの視聴率は過去最低だったようですが、日本での視聴率は過去最高だったと思われます。ホームラン競争では1回戦で敗れ残念でした。オールスター選手が取り囲み注目する中で、ちょっと平常心ではなったように思われました。これまで大谷選手は人前で疲れた様子は見せませんでしたが、あのときはカメラの前でヘトヘトに疲れた様子を曝け出していました。たくさんスイングしたと言っても、相手のソト選手は全く疲れを見せていませんでしたから、不思議でした。どうもデンバーは標高が高く(約1,600m)空気が薄いため、馴れていない人が激しい運動をするととても疲れるようです。大谷選手の意外なウィークポイントです。
翌日の試合ではDHと投手として出場し、存在感を見せました。DHは2打席とも内野ゴロでイマイチでしたが、投手としては160kmを2球投げ、インパクトを残しました。ホワイトソックスのランス・リン投手は、「大谷は投手としては60イニングくらしか投げておらず、オールスターゲームで先発するのはおかしい」と述べていましたが、160kmオーバーの2球を見たら納得だと思います。
ここで私が、と言うよりは日本人の多くが心配したのは、7月1日のヤンキース戦で1回フォアボールを連発しノックアウトされたことがあったので、オールスター戦の緊張もあり、またありやしないか、ということでした。ところがそれは全く杞憂で、伸び伸びとリラックスして投げていました。トラウト選手が述べていますが、大谷選手の凄いところの1つは悪いことを引きずらないメンタルです。メジャーリーグには投手としては、或いは打者としては大谷選手を凌ぐ選手は何人かいますが、悪いところを引きずらないメンタルおよび人間性を含めると、大谷選手はメジャーリーグNO.1の選手かも知れません。と言うことで、大谷選手の素晴らしいメンタルおよび人間性ができた原因を考えてみました。
今の大谷選手が出来た最大の要因は、生まれ持った天賦の才にあることは間違いありません。しかし大谷選手が花巻東高校野球部入学後に書き始めた曼荼羅チャート(花巻東高校野球部では「目標達成シート」)も大きな役割を果たしていると思われます。
目標達成シートはビジネスの現場では必ずと言ってよい程使われています。しかし曼荼羅チャートを使っている会社は少ないと思われます。それは曼荼羅チャートの由来が仏教にあり、宗教的色彩があるということ以外に、書く課題が多すぎるということがあります。通常の目標設定シートでは、課題は多くて5つであり、それ以上になると課題が絞り込めていないという評価となります。優秀なビジネスマンになると、3つの重点課題のみを設定し、それで7~8割の成果が出せるようにします。このように成果に直結する課題のみに絞り込み、その他は捨てているのです。先ず成果に直結しないメンタルや人間性に関する課題を設定することはありません。
これに対して大谷選手が書いた曼荼羅チャートを見ると、8項目中5項目は野球の技術的項目ですが、残り3項目はメンタルや人間性に関する課題となっており、会社における目標達成シートとは大分異なることが分かります。どうもこのメンタルや人間性に関する項目が技術的項目の基盤となっているようです。
具体的に大谷選手が花巻東高校時代に書いた曼荼羅チャートを見てみたいと思います。
曼荼羅チャートは中央に最終目標を書き、それを取り囲むように最終目標を達成するために必要な8つの課題を書きます。太陽の周りを8つの惑星が取り囲む構造と同じです。仏教も極めれば科学に行き着くようです。大谷選手の場合、最終目標は「ドラ1 8球団」(プロ野球ドラフトで8球団から1位指名される。2年先輩の菊池雄星投手が6球団だったことから8球団にしたようです。)となっています。それを達成するために必要な課題としては、中央上から右周りで「コントロール」「キレ」「スピード160km」「変化球」と技術的な課題が並び、そこから先には「運」「人間性」「メンタル」「体づくり」というメンタルや人間性に関する課題が並んでいます。課題「運」を達成するために必要な項目(「運」を取り囲むように8つの具体的施策=やること、が書かれている)を見てみると、(ゴミ拾い)(部屋そうじ)(審判さんへの態度)(本を読む)(応援される人間になる)(プラス思考)(道具を大切に使う)(あいさつ)となっています。ゴミ拾いや審判への態度などメジャーリーグでも実践していることが分かります。課題「人間性」については、(愛される人間)(計画性)(感謝)(継続力)(信頼される人間)(礼儀)(思いやり)(感性)、課題「メンタル」については、(一喜一憂しない)(頭は熱く心は冷静)(雰囲気に流されない)(仲間を思いやる心)(勝利への執着心)(波をつくらない)(ピンチに強い)(はっきりとした目標目的をもつ)と書かれています。今の大谷選手を見るとこれらの課題や項目が実践されていることが分かります。
大谷選手は高校時代に書いた曼荼羅チャートが頭の中に入っており、メジャーリーグの試合の中で修正を加えながら実践していることが分かります。
大谷選手を見ると野球技術とメンタルや人間性は密接不可分であり、この2つを高いレベルで実現するには曼荼羅チャートが有益であることが分かります。お題目や念仏を唱えるよりも、神社で神頼みするよりも曼荼羅チャートを書いた方が御利益があるように思われます。曼荼羅チャートは子供の人生にとって助けになることは間違いありません。