ドル・ウォン為替レートの大幅引上げを働きかけるべき

国連貿易開発会議(UNCTAD)は、韓国の地位をグループA(アジア・アフリカ)からグループB(先進国)に変更したという報道です。 UNCTADでは、加盟国をアジア・アフリカなど主に開発途上国が含まれるグループAと先進国のグループB、中南米の国が含まれるグループC、ロシア・中東圏のグループDの4つのグループに分けており、グループBは欧州と北米を中心に構成されており、アジアでは日本だけだったようです。これに韓国が加わることとなり、韓国は名実ともに先進国入りしたことになります。この原因について韓国では、世界10位の経済規模、主要7か国(G7)首脳会議への参加など、韓国の地位が高まったことを反映したものと言われているようです。

これに加え2020年の貿易収支が456億ドルの黒字となり、日本の280億ドルの黒字を大幅に上回ったことから、韓国では「日本を追い抜いた」と言う発言が出ているようです。これに対しては、経常収支では韓国が752億ドルの黒字に対して、日本は1,700億ドルの黒字であり、総合的にはまだまだ大きな差があるという冷静な意見もあるようです。

GDPとしては、日本5兆1千万ドル、韓国1兆65百万ドル(2020年度)と3倍くらい日本が大きくなっており、このベースに基づく日本の1人当たりGDPは40,146ドル、韓国31,496ドル(いずれも2020年度)とまだ9,000ドル近く日本が上回っています。これは日本に来る韓国人の服装や韓国内での生活の様子をテレビなどで見ると実体と違うことは薄々分かります。また個別の企業の経営指標を見ても、韓国トップのサムスン電子の2020年度決算は、売上高22兆4,500億円、営業利益3兆4,100億円に対し、日本トップのトヨタのそれは、売上高27兆2,145億円、営業利益2兆1,977億円となっており、売上高ではトヨタが約5兆円多いですが、営業利益はサムソン電子が約1兆2,000億円多くなっています。両社の従業員1人当たりの年収を見るとトヨタが965万円、サムスン電子1,220万円と圧倒的にサムスン電子が多くなっています。サムスン電子の営業利益は従業員に平均1,220万円の給与などを支払った上での利益であり、同じ年収ベースで見ればトヨタとの差はもっと大きくなります。韓国の大企業(メーカー)の従業員1人当たり年収は概ね日本の大企業を上回っており、大企業の大卒初年度の平均年収が410万円という報道もあります。

最近発表されたIMFの2019年度の資料によると1人当たりGDPは日本41,150ドルに対して、韓国42,135ドルと韓国が日本を上回っています。労働生産性においてもOECOの資料では、日本81,183ドル、韓国82,252ドルと韓国が日本を抜いたことが分かっています。こちらの方が実感としては納得感があります。

ではなぜこういうことが起きているかと言うと、IMFもOECDも為替のドル・ウォンレートではなく購買力平価ベースでドル・ウォンレートを算出し、これに基づき1人当たりGDPおよび労働生産性を算出しているからです。こちらの方がウォンとドルとの交換価値を正しく反映しており、あるべきドル・ウォン交換価値に近いと考えられます。これから言えることは、韓国ウォンのドルに対する為替レートは30%以上安くなっているということであり、これが巨額な貿易黒字を生み出す原因となっています。これは韓国の輸出額がGDP比42%と先進国ではドイツ(46%)に次ぐ高さにある原因でもあります(ドイツもユーロ安の恩恵を受けている)。日本は1980年代貿易黒字が大き過ぎると言われ、プラザ合意により急激な円高に見舞われました。その結果日本からの輸出は成り立たなくなり、多くの企業が工場を海外に移転しました。欧米の為替レートのターゲットはアジアで唯一の先進国だった日本であり、韓国は日本の陰に隠れてウォン安の恩恵を受けて輸出を伸ばしてきました。その最大の被害者が日本です。

韓国の先進国入りと巨額な貿易黒字を受けて、今後日本はウォン・ドルレートの修正(少なくとも30%以上のウォン高)を要求すべきだと思います。同時に日本の輸出割合(GDP比約16%)の低下に応じたドル・円レートの修正(1ドル150円程度への下落)を行うべきだと思われます。それにより輸出額を今の3倍程度に拡大すれば、GDPが増加し財政を黒字化することが出来きます。