日本が経済で韓国に抜かれた原因は42%対16%にある

8月12日、韓国の全国経済人連合会(全経連)は光復節(8月15日、日本植民地支配からの独立記念日)を控え、1990年以降の日韓経済を比較した結果、韓国が日本を追い抜いたと発表したという報道です。これは独立記念日に当たり日韓経済戦争の勝利宣言と言えます。全経連が根拠とするのは、次の5つの点です。

1.IMD(国際経営開発研究所)の国家競争力評価で、1995年に韓国26位、日本4位だったのが、2020年には韓国23位、日本34位と韓国が上位にきたこと。

2.S&P、ムーディーズ、フィッチの3大国際格付け機関での韓国の格付けが日本より2ランク高いこと。

3.国民1人当たりGDPも購買力平価基準で2018年に日本4万2,725ドルに対して韓国4万3,001ドル(IMF発表)と韓国が上位にきたこと。

4.国連産業開発機構(UNIDO)の世界製造業競争力指数(CIP)で、1990年には韓国17位、日本2位だったのが2018年には韓国3位、日本5位となり韓国が上位にきたこと。

5.韓国の輸出額は2020年基準で5,130億ドルと、人口が2倍以上の日本の80%水準に達したこと。

これはデータから言えば妥当な結論です。普段は憎たらしいことが多い韓国の主張ですが、これは認めざるを得ないと思います。また認めないと日本の反撃は始まりません。

このような結果になったのは3つの原因があります。

1つは1985年のプラザ合意による円高です。戦後日本が経済成長を遂げたのは1ドル360円の固定レートによる輸出の拡大によるものでした。これがプラザ合意以降一気にドル100円を切るまで円高が上昇しため、輸出が大打撃を受けました。その後円換算の輸出額は約80兆円で足踏み状態となりました。

ここで輸出を伸ばしたのが韓国です。それまで日本が輸出していた商品(造船、鉄鋼、テレビ、液晶、半導体など)を相対的に賃金が安い韓国内で生産し、輸出を拡大しました。

2つ目が安いドルウォン為替レートです。1人当たりGDPや労働生産性はドルウォン為替レートで見ると日本が30%程度高いことになっていますが、購買力平価ベースで見ると韓国が日本を抜いたことになるのです。購買力平価はモノの交換価値で比較した場合の通貨交換レートであり、通貨の実質的交換価値に近いと言われています。ということは、ドルウォン為替レートは実体より30%程度安くなっているということです。韓国はこれを利用して輸出を増やしているのです。

3つ目は韓国が国家政策として輸出増大を進めたのに対し、日本がプラザ合意後内需中心に舵を切り、それが失敗した今でもそれを続けていることです。韓国の輸出額はGDPの42%を占めており、この割合はドイツ(46%)に次ぎ世界2位です(日本は16%)。この結果輸出代金として受け取った外貨がウォンに交換され、国内に流通するウォンの量が増大し、好景気となっています。これは1980年後半の不動産バブルが発生した日本の状態とそっくりです。この不動産バブルの原因は、それまで輸出によって獲得された外貨が円に交換されて国内に溢れ出たものです。今韓国でも同じような状況にあります。

これらから言えることは、日本は次の3つのことをすれば韓国を再度逆転できるということです。

1つは現在の日本の経済実態に応じたドル円レートにすること。1ドル150円でもおかしくないと思います。

2.ドルウォンレートを少なくとも30%以上ウォン高に調整すること。ドルウォンレートが30%以上ウォン安になっているのはIMFやOECDのデータから明らかであり、韓国が先進国グループ入りした以上当然のことと考えられます。

3.日本も国家政策として輸出拡大を掲げ、目標としてはドイツ並みを目指すこと。そもそも日本は戦後輸出を増やさないと国家としてやっていけないとして、輸出に力を入れました。それは韓国も同じであり、韓国はそれを実行し、日本は止めてしまったのです。

以上のことを単純化すると、日韓経済逆転の原因はGDPに占める輸出割合である42%(韓国)対16%(日本)にあり、日本が再度韓国を逆転するにはこれを韓国並みにすることを国家目標にする必要があるということになります。これは財政問題(税収不足)を解決する唯一の方法でもあります。