国家公務員試験、地方大学の躍進で分かる官僚のレベルダウン
6月21日今年の国家公務員総合職試験の合格発表があっています。大学別の合格者を見ると、1位東大で256人(13.9%)、2位京大で115人でこれは例年通りですが、今年の特徴として地方国立大学の躍進があります。4位に78人(+22人)で岡山大学、9位に57人(+33人)で千葉大学、11位に54人(+13人)で広島大学が入っています。それ以外は常連で3位北大80人、5位早大77人、6位慶大68人、7位東工大67人、8位東北大65人、10位中央大と九大56人となっています。
岡山大学は最近合格者を増やして来ており、まだ伸びは止まっていません。これに刺激を受けて隣県の広島大学が国家公務員試験に力を入れ始めたものと思われます。千葉大学は首都圏の大学ですが国家公務員試験では新興勢力と言えます。
これらの地方大学が合格者を増やす一方例年ベスト10の常連である旧帝大系の大阪大学(37人)や名古屋大学(36人)、また司法試験や公認会計士試験に強い神戸大学(35人)の合格者が増えていません。何故こう言うことになったかと言うと、民間企業の採用意欲が高く、この3大学は地元の大企業から引っ張りだこだからだと思われます。これは私学の雄早大と慶大にも言えます。旧帝大系でも北大や東北大、九大がそこそこ多いのは、やはり地方にあり民間企業の就職先が少ないためと考えられます。
一方岡山大学や広島大学、千葉大学が合格者数を増やいているのは、学内で国家公務員試験対策講座や外部業者のセミナーなどを開催しているためと考えられます。国家公務員試験(院卒大卒程度)は今年の場合申込者14,310人で合格者1,834人で競争率7.8倍であり、事前に十分な準備をしないと合格は不可能です。一次試験は高校の全科目の知識や時事問題、類推問題、専門科目に関する問題など広範囲に渡るため、大学入学後直ぐに準備に取りかかった方が有利です(高校での知識を忘れないようにするため)。そして大学入試と同様過去問に当たっておく必要があります。また二次試験は専門論文や総合論文であり、これも過去問に当たり論文を作成する訓練が欠かせません。この総合論文では、例えば国会の答弁で賛成、反対どちらの立場でも答弁書を作成できる能力を見られていると考えればよいと思います。要するにテーマが提示されればすらすらと論文が書ける能力が求められています。従って、二次試験を合格したということは単なる知識だけではなく、臨機応変な思考力もあるということになり、なかなか優秀であることは間違いありません。
しかし、論文を読めば東大や京大卒とそれ以下の大学卒では歴然とした差があります。やはり東大、京大卒は抜けています。これまで国家公務員試験は東大や京大のトップクラスが受験し、合格して官僚になっていましたが、最近は東大からの受験者が減少しており、合格率も減少しています(2000年度31.9%、2021年度13.9%)。これは安倍政権や菅政権で官僚の不祥事が相次ぎ、官僚になっても碌な人生にはならないと考える東大生が増えたためと思われます。現在でも東大合格者の数は多いですが、質は相当落ちていると思われます。ざっくりトップ20%は来なくなったと考えて良いと思います。その結果合格者のレベルが低下し、国会提出の法案にミスが続出する事態になっていると思われます(法案チェックは若い官僚の仕事)。そしてそのことが岡山大学などの地方国立大学の合格者増加に繋がっています。医師も国家試験に合格しても実力差があるのと同じように、国家公務員試験に合格していても頭脳差は明確にあります。そしてその頭脳差は大学入試の偏差値に近いと思われます。こう考えると国家公務員試験において地方国立大学が合格者を増やしていることは官僚レベル低下の証拠でもあり、あまり喜べないと思われます。