安倍元首相が高市議員を支援するのは総選挙で勝てるから

自民党総裁選はどうやら岸田文雄衆議院議員(以下岸田氏)、高市早苗衆議院議員(以下高市氏)および河野太郎衆議院議員(以下河野氏)の争いになりそうです。ここで注目されるのが安倍元首相の動向です。

現在安倍元首相は無派閥ですが、実質的には93人の会員を抱える清和会(細田派)の会長と言われており、最終的には総裁選の雌雄を決する存在のようです。

そんな安倍元首相は高市氏の支援を表明しています。高市氏は安倍元首相により内閣府特命大臣、政調会長、総務大臣に任命されており、安倍氏は政界の恩人ですから、大切にするのは当たり前です。しかし安倍元首相は高市氏に世話になっているわけではなく、恩義はないと思われます。一方岸田氏は、安倍政権で外務大臣を約5年、政調会長を約3年務め、安倍元首相とは盟友と言える関係にありました。昨年9月の安倍首相の後継を決める総裁選では、安倍政権の承継を重視し、安倍元首相は菅官房長官を支持しましたが、いつか岸田氏を首相にという思いは持ち続けていたと考えられます。その流れから考えると安倍元首相は岸田氏支持に回るのが自然なように思われます。事実高市氏が安倍元首相に出馬の意思を伝えた際には、「反対はしないけれど、応援もしない」と述べたと伝わっています。なのにその後安倍元首相は高市氏支持を鮮明にしています。

これについては、安倍元首相と主張が近い保守派の高市氏を支援することによって、自民党離れが進んでいると言われる保守派を再結集し、来る総選挙で獲得票数を伸ばすためであり、高市氏が自民党総裁に当選すると思っていないという説が流布されています。そして最終的には岸田氏と河野氏の決算投票となり、その際に細田派を率いて岸田氏に投票し、岸田氏を当選させるシナリオだとされています。

果たしてそうでしょうか?安倍元首相は選挙に勝ち続けて7年8カ月の長期政権を維持した人です。誰よりも選挙に勝つことの大切さを知っています。だから負けると分かっている人を支持するはずがありません。安倍元首相は高市氏が勝つと思って支援していると考えるべきです。そして安倍元首相が高市氏支援を決めた最大の理由は、高市首相なら自民党は総選挙で勝利できると考えているからです。今年7月の東京都議会議員選挙では50議席獲得すると予想されていた自民党は33議席に留まりました。これは保守岩盤層ではなく「とりあえず自民党」層がいなくなったためと思われます。横浜市長選挙でも自民党推薦候補が敗れており、この推測が当てはまります。そのため総裁選後に行われる総選挙では自民党が大幅に議席を減らすことは確実であり、新総裁の誕生によって減少数をどれだけ抑えられるかが焦点になっています。このことを自民党の若手議員は実感しており、総裁選は自分の当落を決める選挙と考えていると思われます。そのため派閥が拘束しない総裁選を訴えています。

そして若手議員以上に総選挙に危機感を持っているのが安倍元首相です。安倍元首相はこのまま総選挙となれば自民党は下野もあると考えていると思います。その場合でも安倍元首相自身は当選するでしょうが、野党政権になった場合、安倍政権時代に問題になったことが残らずほじくり返されることが確実です。森友問題、加計問題、黒川検事長定年延長問題、桜を見る会事件などが再調査され、寝返った官僚から新たな証言が飛び出すことが考えられます。そうなると安倍政権7年8カ月が負の歴史に書き換えられます。安倍元首相としたらこれは何が何でも阻止したいところです。そんなことがあって安倍元首相は若手議員以上に今回の総裁選には真剣だと思われます。そう考えると安倍元首相の高市氏支持は本格的なものであり、総裁選勝利を狙ったものです。新聞・テレビは岸田氏または河野氏が新総裁となると言う予想ですが、選挙の神様安倍元首相の予想は高市氏であり、結果が見ものです。