正規研究職に就けない博士号取得者を高校教師に採用すべき
新聞などの特集に大学で博士号を取得したけれど正規の研究職に就けず、任期制の研究職や非常勤講師などを続けていて貧困に悩む人たちが紹介されることがあります。博士号取得者の全員が優秀なわけではなく、正規の研究者職に就けない人が出て来るのはやむを得ないと思われます。しかし、それらの人たちの競争の中から日本の産業を引っ張るような凄い成果を出す研究者が出て来るわけだから、競争に敗れた人たちにはセーフティネットを用意する必要があります。またそれらの人たちの知識や技術、ノウハウを生かさないのは社会の損失と考えらえます。
博士号取得者が正規の研究職に就けるかどうかの最終時期は35歳前後と考えられます。それまでに正規の研究職に付けなかったらその後就けることはまずないのではないでしょうか。同時に今後の人生を考えて見切りを付けるタイミングと考えられます。この認識は博士号取得者にもあるようですが、そこで門戸が開いている職場が少ないようです。一般企業や官庁では大卒や修士卒が経験を積み博士号取得者のレベルを凌駕しているでしょうし、研究職以外の専門職も見切りが早かった人から埋まっていくと思われます。そうなると35歳前後の人の職場は本当にないことが分かります。
そこで考えられるのが高校教師です。高校教師は専門教科制がはっきりしており、進学校なら深い専門知識を持つ人でないと優秀な生徒の才能を伸ばすことはできないと考えられます。そうなると教職員用の知識やノウハウだけでなく、研究者としての知識やノウハウを持つ教師も必要となります。特にスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されている高校は、科学部などの研究活動に力を入れており、指導教師には研究経験のある人がふさわしいと思われます。先ずはSSH指定校から博士号取得者で正規の研究職に就けなかった人を教師に採用する余地があると思われます。
その場合、教職課程に必要な教科を学んでないことが問題となりますが、これは採用後1年間提携大学の教育学部に派遣して指定する教科の単位を取得することとします。教職で採用された同年齢の教師には、授業ノウハウで負けるかも知れませんが、深く掘り下げた話で生徒の興味を引き出せる可能性があります。その点ではメーカーなどでの社会人経験者も有益です。
現在高校では大学進学の意欲を掻き立てるために早くから社会人の話を聞いたり、大学見学を実施していますが、博士号取得者の教師がいることも生徒の大学進学意欲を掻き立てることになると思われます。親が医者なら将来医者になるという目標を設定するように、身近にいる人が具体的目標になります。博士号取得の教師を配置することに依って、生徒に大学進学ばかりでなくその先の将来設計が増えるメリットもあります。35歳前後となった博士号取得者は教職の場にこそ活かし方があると思われます。