第2次麻生政権誕生で自民党は下野する!

岸田政権の全貌が見えてきました。最初に麻生氏が副総裁に就任し、幹事長が麻生派実力者の甘利明氏、麻生氏の後任の財務大臣には麻生氏の義弟の鈴木俊一氏、経済産業大臣には麻生派の山際大志郎氏が決まった(最終的には経済再生大臣に変更)ことから、岸田氏、麻生氏および甘利氏が相談して決めたことが分かります。これは麻生氏が岸田氏に提案していた大宏池会構想を岸田氏が実質的に受け入れたことを意味しています。麻生氏には鈴木氏を次の麻生派会長にしようと言う思惑があり、財務大臣にして箔をつけさせようとしていると考えられます。しかし鈴木氏は環境や厚生労働分野が長く財政は素人と思われ、財務大臣という要職には適さないことは明らかです。今後財務大臣ポストを麻生氏が私物化しているという批判を浴びることとなりそうです。

また甘利氏には2016年、URへの口利きの対価として本人および秘書が600万円の現金を貰ったという疑惑が発生し、甘利氏は現金受領の事実を認め(政治資金と主張)経済再生大臣の職を辞職しています。捜査の結果、秘書2名が政治資金規正法違反で有罪、甘利氏は不起訴となりましたが、これには捜査に安倍政権が圧力を掛けたという声が根強くあります。そのためその後甘利氏は政権や党の要職に就いていませんでした。これを岸田氏は解除し、岸田政権の軍師に迎えたことになります。甘利氏は経済政策については自民党随一と思われ、岸田氏は政権の重要なテーマの1つである経済再生を甘利氏に委ねるようです。甘利氏としては、半導体国内生産の強化などを中心となって進めてきたため、経済産業大臣を希望した可能性があります。そこで経済産業大臣には甘利氏の子分である山際氏を充て、甘利氏が指揮監督することになったと考えられます(最終的には山際氏は経済再生担当大臣に変更された)。

実質的な大宏池会の誕生によって麻生派55人と宏池会46人(8月末)を合わせると101人となり、細田派の96人を上回り自民党最大の勢力となります。これにより岸田氏は細田派の実質的なオーナーと言われる安倍元首相(安倍氏)を気にせず采配を振えることになります。岸田氏は今回の人事に関し安倍氏には殆ど相談していないと思われます。官房長官に細田派の松野博一氏を充てていますが、松野氏は岸田氏が政調会長時代に政調会長代理としてコンビを組んだ縁と言われており、安倍氏の押しではないようです。安倍氏は昨年安倍首相辞任に伴う総裁選挙では菅氏を支援し、今回の総裁選挙では高市氏を支援しました。岸田氏は安倍政権で外相を約5年、政調会長を約3年務め、首相禅譲の約束があったと言われており、安倍元首相には2度裏切られています。岸田氏が麻生氏の大宏池会構想に同意したのは、安倍氏に頼らないことの決意と考えられ、安倍氏離れを始めたと思われます。

岸田氏が大宏池会構想の下、甘利氏を政権運営の中心に据えたことは、政策実現という観点では良い判断のように思われます。しかし11月にあると予想される総選挙を考えると別のやり方があったように思われます。岸田氏は甘利氏の他小渕優子氏を組織運動本部長、高木毅氏を国会対策委員長に任命していますが、この3人にはいずれもかって政治資金規正法違反の疑惑があったことから、ネット上では岸田氏は金銭疑惑に鈍感過ぎるとの批判が渦巻いています。岸田氏としては、それを考えて閣僚ではなく党役員としたものと思われますが、選挙直前の人事としては疑問があります。人事を選挙用人事と選挙後の人事に分け、選挙用人事ではこの3人のようにお金にまつわる疑惑があった人物の党役員や閣僚任命は避け、選挙に勝利してから任命すればよかったのです。報道では、安倍氏が高市氏を幹事長にするべきと主張したと言われていますが、これは高市幹事長ならば選挙の顔となり、自民党が勝利する可能性が高くなるからです。高市幹事長はネット民に絶大な支持があり、弁舌もさわやかで選挙応援に行けば人だかりができること請け合いです。従って選挙までは高市幹事長で、選挙後に甘利幹事長に交代するという手がありました(高市氏は重要閣僚で処遇する)。

岸田氏が甘利氏を幹事長に選んだのは、調整力と政策遂行能力を評価したからだと思いますが、選挙に勝つという視点が抜けていると思われます。岸田氏の選挙に対する執念は、安倍氏の10分の1くらいではないでしょうか。

麻生政権の2009年に自民党は総選挙で民主党に大敗し下野しています。それは麻生首相の不人気が最大の理由でした。そして安倍・菅政権でも麻生財務大臣の発言は度々問題となっており、麻生氏は国民が嫌いな政治家のトップ3(二階、麻生、安倍)に入ります。岸田政権が大宏池会構想の下第2次麻生政権のように見えることにより、自民党は次の総選挙で下野する可能性が高まったと思われます。