総選挙の投票率は65%程度に上昇する
10月14日に衆議院が解散され、10月19日公示、10月31日投票の日程で総選挙が行われます。岸田首相選任から2週間後の選挙公示であり、岸田首相はよっぽど自分の人気に自信があると思われます。その割には新聞各社の世論調査では、岸田内閣の支持率は45%から63%とこれまでの新政権と比べて低くなっています。10月15日の時事通信の世論調査では40%という数字になっており、もう急落している様子が伺えます。どうも岸田首相の発言や公約が次々に反故にされることが原因のようです。15日には山際経済再生担当大臣が岸田首相の看板公約と思われた「令和の所得倍増計画」について「文字通りの『所得倍増』というものを指し示しているものではなくて、多くの方が所得を上げられるような環境を作って、そういう社会にしていきたいということを示す言葉だと総理はおっしゃっているじゃないですか」と修正を加えましたので、これでは岸田首相の言うことは信用できないと思った有権者は多いと思われます。今後更なる支持率の低下に繋がるのは確実です。こうなると総選挙は岸田政権や自民党にとって悲惨な結果となりそうです。
それに輪を掛けるのが高い投票率になりそうなことです。私の予想では前回の53.68%から10%以上伸びて65%程度になると思われます。以下にその根拠を述べます。
先ず第一に安倍政権7年8カ月の間に不正が横行し、これに憤懣を持った人たちが投票に行きます。安倍首相の友人関係から問題が生じた加計、森友事件がありました。森友事件の際には安倍首相と麻生財務大臣が国会で強弁を続け、所管の官僚を煽り公文書偽造まで引き起こしました。更に安倍首相自身は桜を見る会に自身の後援会会員を多数招待し、その前夜のパーティ代の一部を安倍事務所が負担するという政治資金規正法違反事件を引き起こしていました。また安倍首相の盟友である甘利経済再生担当大臣は建設会社の総務担当者から大臣室で現金100万円を受領していたことが暴露されました。その担当者はURへの口利き依頼の目的で渡したと言いましたが、甘利氏は政治献金と主張しました。甘利事務所の秘書がURに口利きし、その後URから建設会社に補償金2億2,000万円が支払われており、あっせん利得処罰罪の適用が濃厚でした。この事件では、甘利事務所の秘書は政治資金規正法違反で起訴、甘利氏は不起訴となりましたが、安倍政権が検察の捜査に圧力を掛けた疑いが指摘されました。桜を見る会を巡る安倍事務所の政治資金規正法違反事件も安倍首相退任後起訴となりましたので、安倍政権が捜査に影響を及ぼしていたのは間違いないと思われます。これらに対する憤懣は今なお強いものがあります。
第二にコロナで窮地に追い込まれた人たちが投票に行きます。特にコロナ流行の度に時短を強いられた飲食店関係者や、人流の抑制によって売上が落ちた小売店や旅行・ホテル・旅館関係者などは、なぜ自分たちだけという気持ちが強く、有効な対策を打たなかった政府自民党への憤懣は強いものがあります。また感染して自宅療養を求められ、症状が急変しても病床がないと入院できなかった人たちや自宅療養中に死亡した人たちの関係者の憤懣も相当なものです。
第三にNHK受信料に不満を持ち、NHKスクランブル化を求める人たちが投票に行きます。NHKスクランブル化は国民の大多数が賛成ですが、自民党がこれを阻止しています。これを実現するためには、自民党政権を終わらせるしかなく、そのために投票に行くと考える人が増えています。
第四に夫婦別姓を求める人たちが投票に行きます。この問題については今年6月に最高裁がこの関連法律を合憲としましたが、この問題は立法府が解決すべきであると述べています。選択的ということは強制するものではないことから誰も不利益を被らないにも関わらず、自民党が立法化を阻止しています。これを実現するためには投票に行くしかありません。
第五にネット民が投票に行きます。これに火を着けたのは9月に行われた自民党総裁選です。ネット民は政策の完成度が高い高市議員を熱烈に支持しましたが、高市議員は3位に沈みました。この際のネットの書き込みには、「高市首相なら自民党に投票する」との書き込みが多数見られました。ネット民は自民党総裁選で投票できなかった憤懣を総選挙の投票にぶつけてきます。
このように今回の総選にはこれまでの憤懣をぶつける選挙になります。その結果投票率は前回より10%以上伸びて65%程度にはなると予想されます。それでも前回(53.68%)、前々回(52.66%)が低過ぎただけで、その前は59.32%、69.28%であり、1993年以前は65%~75%の投票率となっています。50%前半の低い2回の投票率は安倍政権時代であり、安倍首相は投票率を下げて絶対多数を維持していたことになります。今回の65%の予測は普通に戻るだけということになります。