デンソーの半導体事業に注目!

台湾の世界最大の半導体受託製造会社TSMCが熊本に工場を造ることが決まったと言う報道です。これにソニーが参画することは以前から報道されていましたが、今回トヨタグループの電装品会社日本電装(以下デンソー)も参画することが明らかになりました。トヨタは8月頃から減産を拡大(10月は40万台以上)していますが、主な原因は東南アジアのコロナ感染拡大による部品供給不足で半導体不足とは言われていませんが、半導体需給も相当タイトで、この状態は将来も続くと予想しているものと考えられます。

トヨタは車載半導体の開発・設計機能を担う部門として、2020年4月にデンソー51%、トヨタ49%出資でミライズテクノロジーズという会社を設立しています。半導体不足が現れたのはその後ですから、この当時は供給面の対応は考えていなかったと思われます。トヨタに車載半導体を供給する会社の1つとしてルネサスエレクトロニクスという会社がありますが、同社が2013年に業績不振に陥り産業革新機構などから出資を受けた際、産業革新機構1,500億円に対しトヨタは50億円、デンソーは10億円しか出資しませんでした。これも嫌々ながらという態度でした。従って当時トヨタは半導体が車にとってこれほど重要な部品になるとは考えていなかったことになります。その後2018年3月にデンソーが産業革新機構からルネサス株5%(約830億円)を買い受けていますので、この頃から半導体の重要性に気付いてきたものと思われます。それ以前から日本電産の永守社長がルネサスの買収に意欲を示していましたので、永守社長が先見の明があったことになります。これに対してルネサスは、トヨタやデンソーが出資割合を増やし、影響力を高めることは望んでないようです。2021年6月ルネサスは公募増資や売り出しを行い、産業革新機構の持ち株割合を20.4%まで下げていますので、トヨタやデンソーが産業革新機構からルネサス株式を買い取り子会社化する可能性は遠のいたように思えます。

このように自動車メーカーにとって半導体問題は、設計・開発の問題から製造の問題になっており、製造拠点の確保が課題となってきました。今回TSMCの熊本工場にデンソーが参画するのは、この解決策の1つだと思われます。デンソーは愛知県刈谷、愛知県幸田町、岩手、北海道千歳に自社工場を持つともに、トヨタ広瀬工場の半導体製造設備の移管も受けて、車載半導体の製造能力を増強しています。ライバルであるドイツのボッシュも今年6月約1,330億円を投資して半導体工場を新設しています。半導体を制する者が自動車を制する状況になりそうです。デンソーの場合、トヨタばかりでなくトヨタグループのダイハツ、スズキ、マツダ、スバル、日野も顧客となりますので、販路に困ることはありません。

今後電気自動車の割合が増えると、自動車はどこでも作れるコモディティ商品となり、鴻海などの受託製造企業が参入することが予想されます。その結果、既存の自動車メーカーの損益は悪化することが予想されますが、車載半導体メーカーはパソコンにおけるインテルのような立場となり、成長産業化する可能性があります。これから就職するならトヨタよりデンソーかも知れません。