米軍駐留費=「思いやり予算」は米軍を侮辱している

11月5日のヤフーニュースに読売新聞オンラインから自民党の林芳正衆議院議員が茂木外相の後任外相に就任予定という記事が転載されていました。その記事の中で林外相の重要な課題として「米国とは、22年度以降の在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を巡る交渉」があると書かれていました。この問題は良く出てきますが「在日米軍駐留費」を「思いやり予算」と言うのはいい加減やめるべきだと思います。米軍を中心として世界中の安全保障関係者の立場からすれば、これは明らかに米軍駐留費で利益を受ける日本側の当然の負担金であり、「おもいやり予算」という慈善的・施し的な意味合いのお金ではありません。この言葉を聞くたびに米軍関係者は胸糞悪い思いをし、現実を直視しない日本及び日本人を嘲笑していると思われます。

日本の周囲を見ると仮想敵国ばかりです。中国とは尖閣諸島をめぐり緊張関係にありますし、将来必ず武力衝突があると想定されます。また韓国とは歴史問題が横たわり、人流も途絶えている状態です。そして北を見ると国後島・択捉島にロシアが軍事基地を置いていますし、ハバロフスクはロシアの極東艦隊の基地となっています。このように日本は3方面を仮想敵国に囲まれている状態です。これは中東のイスラエル状態と言えます。もし韓国との間に小規模な武力衝突が生じれば、中国が尖閣諸島に侵攻し、それに呼応してロシアが北海道に侵攻することが考えられます。このように日本は3方面からの侵攻に備える必要があります。これに対して日本の備えはというと、8月アフガニスタンから日本人とよび関係者を撤収させるべく派遣した自衛隊機が全く成果なく撤収したことで分かるように、自衛隊が軍事組織であることが疑われる状態です。2020年度の防衛費は約5.3兆円で世界9位ですが、ほぼ韓国並み(4.9兆円)であり、中国の推定27兆円の5分の1です。ロシアは6.7兆円と日本と大差ないですが、核ミサイルや原子力潜水艦など破壊的武器を装備し、軍事力では日本を遥かに上回るのは確実です。こんな中で日本が安全を確保する方策としては、防衛費を増やして日本独自の防衛体制を確保するか、米軍との同盟関係を強固なものにする以外ありません。

現在これまで防衛費をGDPの1%以内としてきた方針を撤廃し、2%とする方向にありますが、これは日本独自の防衛体制を強化すると共に、米国にとっても魅力的な軍事パートナーとなるためのものです。今の日本の防衛力では、米軍にとって日米同盟は片務的であり、メリットがありません。ということは、いざ日本と中国などとの間に軍事衝突が生じそうになったら、米軍は撤収する可能性が高いということです。これは日本の防衛関係者なら誰も考えるところです。これを防ぐためには、日本の自衛隊が米軍にとっても魅力的な軍事パートナーとなる必要があります。「おもいやり予算」という言葉は、命がけのパートナーに対して使う言葉ではありません。実体に即して「防衛分担金」または「駐留経費負担金」という呼称に改めるべきだと思います。