半導体産業の強化は韓国への最高の対抗措置
世界最大の半導体受託製造メーカーTSMCが熊本に8,000億円を投じて工場を建設することになりました。それにはソニーが約570億円出資し、更に日本電装が参画(出資?)すると報道されています。この報道から考えると半導体を確保したい日本のメーカーが更に出資することが予想されます。そのためTSMCの熊本工場は、日本の半導体ユーザーに直結した工場となりそうです。これに対して経済産業省は、投資額の半分の約4000億円を助成する計画のようです。こんなに助成するのならエルピーダメモリが資金不足になった2012年に助成していれば日本資本のDRAMメーカーを維持できたのにと、日本政府の無能さが残念でなりません。今ではDRAMは韓国のサムスンとSKハイニックスが74%(2020年度)を握っており、韓国はDRAMの世界的供給基地となっています。サムスンとSKハイニックスは日本のソニーが得意とするCMOSセンサーやキオクシアが得意とするNANDフラッシュメモリーでも攻勢を強めており、ソニーやキオクシアは劣勢にあります。このままではまたDRAMの二の舞になる心配もあります。サムスンとSKハイニックスを見るとDRAM技術が基本となり、CMOSセンサーやNANDフラッシュメモリーに展開しており、半導体事業の強化の観点からすると日本にもDRAM企業を再度育成する必要があるように思われます。台湾では南亜科技や台湾華邦電子などがまだ小規模とは言えDRAM製造を行っており、日本企業も十分やれるはずです。その場合、1兆円規模の基金を用意し、長期的な支援体制を作る必要があります。
韓国は国民1人当たりGDPや労働生産性など多くの経済指標で日本を抜き去り、アジア最先端の経済大国になっています。そしてその中心はサムスン、SKハイニックスの半導体事業にあります。とくにサムスンの2020年度の業績は売上高約23兆円、営業利益3.5兆円と売上高ではトヨタ(27兆円)を下回りますが、営業利益ではトヨタ(2.1兆円)を上回っています。サムスンの従業員1人当たり給与は約1,220万円(2020年度)と報道されており、トヨタの約865万円の約1.4倍となっています。これを見ると韓国の労働者の給与が日本より年間38万円多いという報道も納得できます。そしてこれらの最大の要因は半導体産業の差にあると思われます。従って日本としては半導体産業で韓国の牙城を崩さないと韓国経済に追いつき、追い越すことは不可能です。
韓国は慰安婦問題や徴用工問題、福島原発処理水問題などで無理難題を吹っかけてきますが、これは経済で日本を抜いたという自信が背景になっています。今となっては格下となった日本に過去2度も喫した屈辱を晴らしているようにも思われます。韓国には「溺れた犬は叩け」という諺があり、弱みを見せると徹底的に攻撃してきます。経済が停滞している日本を溺れた犬と見做しているのです。
2019年7月日本は、徴用工問題に対する韓国の対応を不服として(ではないと言っていますが)、半導体の製造で使うレジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドの輸出を制限しました。当初これらに対する依存率の高かったサムスンなどはパニックになりましたが、日本がサムスンなどの半導体製造を止める覚悟がなかったことから、殆ど影響はありませんでした。それどころかこれらの製品の国産化を進め、日本依存を脱したと言っています。これはスムススンやSKハイニックスの資金力と技術力を考えれば十分予測できたことです。ヤフーコメなどを見ると、韓国をまだ格下と見做し、徴用工問題で日本企業が損害を被ったら強力な対抗措置を行うべきという声が溢れていますが、日本は世界トップクラスの経済力を誇る韓国が打撃を被る対抗措置を持ち合わせていません。日本の銀行が韓国の企業に対して行っている融資を制限すればよいという声もありますが、サムスンやSKハイニックスのDRAM投資を支えた韓国の金融機構は強力であり、全く影響はないと思われます。韓国に対して日本が採りうる最も有効な対抗手段は、日本の半導体産業の強化です。これにより韓国サムスンとSKハイニックスの牙城を壊すことができれば、2社に対する依存度が高い韓国経済は弱体化します。そうすれば韓国の日本に対する態度も軟化します。このように日本の半導体産業の強化は日本の韓国に対する最大の対抗手段でもあります。