官僚の次に不人気化するのは法曹

官僚の質が低下していることは、東大生の合格割合が低下(2000年31.9%→2021年13.9%))したことからも伺えますし、最近国会提出法案にミスが目立つことからも伺えます。官僚の人気低下の原因について新聞報道では長時間労働を主因に挙げていますが、それは違うと思われます。主因は安倍政権時に官僚が安倍首相の召使のようになり、数々の不祥事を引き起こし辞めて行ったからです。森友事件に関し国会で虚偽の証言をし、土地の取引経緯を書いた書類の変造を命じた財務省の佐川局長や、加計学園問題で国会に参考人招致され「記憶に有りません」を連発し、自ら辞職した経済産業省の棚瀬審議官、国家公務員法の解釈変更で定年延長になり、その後賭けマージャンで辞職した黒川東京高検検事長などが代表的です。かって官僚は国家ビジョンを作成し実行するロマン溢れる仕事でしたが、今では政治家の僕(しもべ)のようになっています。これでは志ある若者は官僚になりません。それに最近東大OBが頭脳を生かして起業し、IPOで巨額の富を築く例が増えており、東大生にとってこちらの方が魅力的になっています。

そしてこれまでの花形職業で次に不人気化するのが弁護士、検事、裁判官などの法曹だと思われます。

弁護士は最近悪徳弁護士が増え、収入も決して恵まれていないことが分かって来ています

検事はかって正義の味方というイメージでしたが、最近は政治家の介入や検察組織の利益のために、起訴すべき人を起訴せず、起訴すべきでない人を起訴する事例が目立っています。例えば前者の例としては広島の選挙買収事件で100人の被買収者を不起訴にしたこと、後者の例としては損害が出ていないのに日産のゴーン会長を逮捕・起訴したことが挙げられます。この2件については検察官の中でも批判が多く、失望した検察官が多いと思われます。

裁判官については、最高裁判所の憲法判断を見れば裁判官のレベルが分かります。裁判官が扱う最も重要な裁判は憲法判断ですが、日本では違憲判決は殆ど出ません。どんなに古い法律で社会実体に合わなくなっても、国会が制定したことを根拠に合憲とします。その趣旨は、立法権は国会にあり、社会的に妥当性が無くなっていれば国会が改正すべきと言うところにあります。社会的妥当性を問う問題ならこれでも良いですが、基本的人権にかかわる問題は憲法に照らして最高裁判所が厳格に判断する必要がありますが、今の最高裁判所はこれを避けています。代表的な裁判がNHK受信料を定めた放送法64条1項に関する憲法裁判です。最高裁は2017年12月これを合憲と判断しています。放送法64条1項は「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は協会とその放送の受信について契約をしなければならない」と定めていますが、この規定は個人の意思に反して契約を結ばせるところで違憲です。基本的人権は民主主義国家の基本規範ですが、その中でも中心となるのは個人の意思の尊厳です。個人の意思は例え国家であっても最大限尊重しなければならないということです。これは結婚が両性の合意のみで成立し、誰も強制できないことに最も端的に表れています。ならば、受信契約を強制する契約は認められず、放送法64条1項は違憲と言うことになります。それではNHKの経営が成り立たないと言うのなら、NHKの運営費を税金で徴収(公共放送負担金)し、NHKに交付すればよいのです。これでは国営放送となり、政府の統制下に入ってしまうと言う声もありますが、今でもNHKの予算は国会で審議され、NHK会長・経営委員会委員は政府が指名しており、政府の統制下と同じ状況です。NHKが自ら今の制度を望むのは、NHK受信料ならば運営費が税収に左右されないからです。このように受信契約に代わる代替手段があるわけだから、違憲判決を出す環境は整っています。なのに違憲判決を出せない最高裁裁判官は、憲法の番人ではなくNHKの番人、政府の番犬に成り下がっています。その結果憲法をお題目以下の存在にしています。

このように法曹が憲法や法律よりも政治や社会に左右されるのは、法曹教育で法理や判例を叩き込まれ、立法論や政策論は法曹の領域ではないと教え込まれるためです。そのため法曹人の実体は法理の囚人です。この囚人性が露呈しているのが今の法曹の体たらくです。これまで大学法学部は文系最高峰と言われて来ましたが、2021年春の東大入試で文1(法学部)の合格最低点(335点)が文2(経済学部、338点)ばかりでなく文3(文学部・教育学部、337点)にも抜かれたことで分かるように、不人気化することは確実です。