石原伸晃参与は岸田首相の多数派工作
12月6日岸田首相は10月の衆議院総選挙で落選した石原伸晃氏を内閣参与に任命しました。これについては選挙で信任されなかった人を内閣参与に任命することは国民の意思に反する、お友達人事などの批判が飛び交いました。この批判は正しかったようで、翌日AERAが石原事務所は今年4~6月の間、コロナによって収入が減少した企業や自営者に支給される雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金約60万円を受給していたことが報道されました。この助成金は事業者への支給を想定しており、政治家の事務所は想定されていなかったと思われます。しかし対象外とする明確な規定もなかったことから、石原事務所から問い合わせを受けた所管の厚生労働省は受給可能と答えたようです。それは自民党の大物代議士の事務所からと問い合わせがあったら、業務への影響を考えて問い合わせの意向に沿うように答えます。この件は石原氏が内閣参与に任命されていなければ明らかにならなかったと思われ、岸田首相の好意は裏目に出たようです。岸田首相との関係で自民党幹事長に就任した甘利衆議院議員が先の衆議院総選挙の選挙区で落選し幹事長を辞任したことに続く辞任であり、人事を書き留めていると思われる岸田ノートはデスノートと揶揄されています。
石原氏の内閣参与任命の目的については、失業救済とか、お友達人事とか言われていますが、どれも違うと思われます。この任命の目的は、自民党の勢力図を見れば分かります。読売新聞の12月10日の記事によると、自民党派閥の員数は次のようになっています。
安倍派 95人
麻生派 53人
茂木派 53人
二階派 45人
岸田派 42人
旧石原派 6人
これを岸田支持派と非岸田支持派(それほど支持していない派)に分けてみると、岸田支持派は麻生派53人、茂木派53人、岸田派42人の合計148人となります。これに対して非岸田支持派は安倍派95人、二階派45人で合計140人となります。安倍派を非岸田支持派に分類するのは安倍氏が自民党総裁選で2回に渡り岸田氏を支持しなかったことから、岸田氏と安倍氏には修復不能な亀裂があると思わるからです。二階派については、10月の総裁選で岸田氏が二階幹事長外しを公約にしたことから、二階派が支持するわけがありません。これを見ると岸田支持派と非岸田支持派の人数が拮抗していることが分かります。だから岸田首相にとっては6人と言えども旧石原派の取り込みは重要です。それに旧石原派を引き継ぐ予定の森山前国会対策委員長は、安倍元首相、菅前首相、二階前幹事長に重用された人でどちらかと言うと非岸田支持派となります。このため岸田首相は石原氏を参与に任命したと考えられます。非岸田支持派には菅元首相が束ねる無派閥グループや石破グループもあり、実勢は非岸田支持派が優勢を考えられます。
最近の新聞調査による岸田内閣の支持率は60%を超えており、暫く岸田下ろしの党内抗争は考えられませんが、来年7月の参議院選挙にかけ岸田内閣の支持率が低下てくると、岸田下ろしの党内抗争が起きることも予想されます。その党内抗争に備え弱小派閥の長である岸田首相は味方を増やしておく必要があり、国民の反発がある中石原氏の参与任命を強行したと考えられます。しかし石原氏が雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金約60万円を受給していたことが報道された後、岸田首相はあっさりと石原氏の参与辞任を認めていますので、石原氏の参与任命による旧石原派の取り込みは岸田首相自身のアイデアではなく、党内工作担当の側近の助言に基づくものであり、当該側近が石原氏と交渉し承認を取り付け、また辞任を求めたものと推測されます。
(この記事を書いたのは先週の土曜日ですが、昨日石原派が森山派になったというヤフーニュースのコメントを見ていたら、本記事と同じような内容のものがありました。後出しになってしまいましたが、折角書いたので載せました。)