賃金引上げには豊田社長の報酬を20億円超にする必要がある

岸田政権が賃金引上げに力を入れています。11月15日には荻生田経産大臣が経団連の十倉会長に2022年の賃金引上げを要請しています。十倉会長は「一律ということはできないが、賃金決定の大原則に基づいて、賃上げのモメンタム(勢い)は引き続き堅持していく」と述べ、利益を上げている企業には賃上げを促していく姿勢を見せたということです。これを受け、大和証券やサントリーなどが賃上げを表明しています。これに銀行や生損保などの規制業種や商社、半導体、ITなどの業績好調業種が続くと思われます。

これを全業種に波及させ、賃金レベルを引上げるために不可欠なことがあります。それは日本一の利益を誇るトヨタの豊田社長の報酬を20億円以上に引上げ、世界水準にすることです。昨年豊田社長の一昨年の報酬が4億4,200万円だったと報道され、ネット上で話題になりました。圧倒的に「安い!」という声でした。当たり前です。トヨタの一昨年の業績は、売上高29兆9,299億円、営業利益2兆4,428億円であり、日本一の売上高と利益を誇っています。海外の経営者の報酬は数10億円が普通ですし、日本でもソニーの吉田社長の報酬は12億円を超えています(ソニーの昨季の業績は売上高8兆9,936億円、営業利益9,718億円)。豊田社長の報酬は上場企業の社長(含む取締役)報酬の中では10位くらいになります。これは誰でも安いと思います。

これをもってネットでは、

「世界基準で比べれば、もっと貰って良いはず。でも、豊田社長は貰わない。そこが、世界のTOYOTAの社長。従業員とその家族を守り、自社のみならず、日本の自動車業界全体を考える姿勢に頭が下がります」

「創業家でこれだけ評判の良い人も珍しいのではないかと思います。各署への影響を考えると報酬はもっと多くて良いと思いますが、ご本人の意思もあるでしょうから周りがとやかくいうことでもないと思います」

「自動車業界全体の事を考えてくださってるし、日本の事も考えてくださってる。もっと貰っても良いんだけど、そこもしっかり考えておられるのだろう。世界に誇れる経営者だと思う」

など評価する声が大部分となっています。

しかしこれは間違った捉え方です。豊田社長の報酬が安い結果他の役員報酬も低く抑えられ、一般社員の給料も上がらなくなっているのです。豊田社長が社長報酬を抑えているのは、一般社員の給料を抑えるためです。豊田社長は創業家出身ですから、トヨタは家業であり、永続が一番重要です。そのためには社外流出をできるだけ小さくして資金を社内にため込むのが一番です。そのために自分の報酬を抑えているのです。豊田社長の場合、トヨタの株式をたくさん持っており多額の配当収入もありますから、報酬を多くする必要はありません。

豊田社長の報酬が日本企業の賃金体系の天井となっており、この天井を上げないと日本の賃金水準は上がりません。従って賃上げを継続的なものとして日本の賃金水準を引き上げるには、豊田社長の報酬を最低年間20億円以上に引き上げる必要がありまます。20億円と言うのは日産のゴーン元会長が報酬の開示義務前に貰っていた報酬で、世界水準と言われています。トヨタでもフランス人のルロア元副社長は在職当時約15億円の報酬を得ていましたので、トヨタでも世界の報酬基準は認識しています。なのに日本人役員については豊田社長以下に抑えています。この結果日本人社員の賃金が押さえられることになっているのです。自動車の場合これから電動化などで業績不安がありますが、ベース賃金ではなく好業績のときにボーナス支給額を引き上げる形で賃上げを実現すればよいはずです。

豊田社長の報酬20億円以上が実現すれば、日本の多くの企業で役員報酬が引き上げられ、それに伴い従業員の賃金引上げが実現します。