京都の企業が強いのは基礎研究重視の文化があるから

日本で大企業が多い地域と言えば東京、大阪、愛知、神奈川、兵庫辺りになると思いますが、強い企業が多いという地域という観点で見れば京都が挙げられます。

京都の企業と言えば、京セラ、村田製作所、日本電産、任天堂、オムロン、ローム、島津製作所、スクリーン、宝などが挙げられ、競争力の強い製品を持つ世界的に知られた企業が多いのが特徴です。京都には売上高1兆円を超える企業が6社もあります(トップは京セラ1兆6,237億円:2020年度)。多くの企業が業歴は長いのですが、絶え間なく成長を続けています。この点で東芝やパナソニックのように事業見直しに直面している東京や大阪の大企業と違っています。

その原因は、京都の企業には基礎研究を重視する文化が根付いているためではないかと思われます。京セラは創業者稲盛氏らセラミックの研究から始まったため、基礎から徹底的にやる文化がありますし、日本電産も同様です。そのためか京セラの稲盛氏は稲盛財団で京都賞を設け、基礎研究を振興していますし、日本電産の永守会長は京都先端科学大学を買収して理事長に就任しています(買収という表現は正しくないかも知れませんが、実質的意味です)。

この両者の姿勢には基礎科学、それも先端の基礎科学重視の姿勢が見られます。創業者にこの姿勢がある限り、会社は基礎研究重視の文化になることは当然であり、常に世の中に先端の製品を出そうとします。その結果世界トップクラスを維持できることになります。

京都には京都大学があり、ノーベル賞受賞者を輩出しています。またノーベル賞の成果を事業化する動きも盛んです。IPS細胞の発見でノーベル賞を受賞した山中教授はIPS研究財団を作り、事業化の基盤としています。またPD-1分子の発見をがん治療薬オプジーボの開発につなげた京都大学の本庶名誉教授は、その開発・販売企業小野薬品と共同で基礎研究財団を作り、オプジーボの収益の一部を基礎研究に還元する仕組みを作り上げました。東京大学も京大と並ぶほどノーベル賞受賞者排出していますが、東京大学ではこのような仕組みはできていません。

京都は基礎研究の成果を事業化する(世の中に出す)文化があるのに対し、東京では基礎研究と事業化が全く別の分野として取り扱われているように感じます。新しい製品は基礎研究からしか生まれないのは自明のことですが、金融資本が発達している東京では、金融市場の評価を得るために基礎研究のコストを削って目先の利益を多くする傾向があるように感じられます。それに対して金融資本の影響が少ない京都では、長い間都が置かれ本物志向が強く、一流の文化や学問が集積してきていることから、基礎研究重視の姿勢が企業にもビルドインされているようです。この見方が正しいとすれば、京都の企業は今後も成長を続けるし、京都からは今後も日本を代表するベンチャー企業が生まれると予想されます。